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2007年11月29日(木) 10時00分

テレビのデジタル化は視聴者不在の付け焼き刃日刊ゲンダイ

「2011年7月24日」岡村黎明著(朝日新聞社 740円)

「テレビ放送はすべて地デジに移行し、これまでのテレビは使えなくなります」。そんなメッセージばかりが聞こえる昨今。しかし、実はチューナーを使えば限定的ながらもデジタルをアナログに変換することは可能。それすらろくに周知せず、広告代理店や家電業界と組んで宣伝にばかり奔走する政府はどうなっているのか。
 長年のテレビ記者体験を持ち、その後は大学で教える著者はデジタル放送先進国のイギリスに取材し、先行試験地域をつくってあらかじめ不測の事態にも備えようとする周到な対応に比べて、日本ではすべてが視聴者不在の付け焼き刃であることに鋭い警告を発する。
 テレビの影響による画一化は日本から健全な地域社会を奪い、国民生活に密着した放送を官主導の“護送船団方式”に閉じ込めて、利権と腐敗の横行する業界に仕立て上げてきた。それに対する批判は日増しに高まっているが、せっかくのデジタル時代の到来を前に「女子アナからデジアナへ」などとバカげたキャンペーンばかりやり、NHKと民放5社を頂点とする既存秩序の維持に汲々とする愚を著者は戒めている。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071129-00000012-gen-ent