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2007年11月29日(木) 20時00分

少年審判、被害者・遺族の傍聴可能に…法相が法改正を諮問読売新聞

 鳩山法相は29日、刑事事件の少年審判で被害者や遺族の傍聴を認めることを柱とした少年法改正を、法制審議会(法相の諮問機関)に諮問した。

 法務省は来春にも答申を受け、次期通常国会に法案を提出したい考え。少年審判はこれまで、少年の更生を重視する観点から厳格な非公開が貫かれてきたが、法改正が実現すれば、審判のあり方は大きく転換することになる。

 刑事事件を起こした少年の処遇を決める審判は現在、家裁の審判廷で行われ、原則として裁判官、家裁調査官、書記官のほかには、少年本人と保護者、付添人(弁護士)しか室内に入れない。被害者側からは、「審判の詳しい経過や、少年の反省の状況などを知ることができない」との不満の声が上がっていた。

 諮問によると、新たな傍聴制度の対象は、殺人など故意の犯罪行為で被害者を死傷させた事件と、交通事故などの業務上過失致死傷事件。被害者や遺族が傍聴を希望すれば、家裁が少年の年齢や心身の状態などを考慮したうえで、傍聴を許可するとしている。少年のプライバシー保護に配慮し、傍聴で知り得た少年の氏名などの個人情報を外部に漏らすことは禁じる。

 一部の被害者団体は、傍聴だけでなく、被害者が少年に審判廷で質問する権利も認めるよう求めていたが、同省は「少年審判は事件から間もない時期に実施されるため、少年と被害者の間で感情的な応酬が行われる恐れがある」として、質問権の導入を見送った。

 一方、日本弁護士連合会は29日までに、今回の傍聴制度に反対する意見書をまとめた。<1>精神的に未熟な少年が、被害者がそばにいることで委縮し、正しい供述ができなくなる<2>裁判官が少年に優しく語りかけて更生への意欲を目覚めさせることが困難になる——などを理由に挙げている。被害者団体によっては、「事件直後に加害者の少年と向き合えば逆に被害者が精神的に傷つきかねない」との懸念も表明しており、法制審の議論では、こうした問題点をどう解決するかがテーマになりそうだ。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071129it12.htm