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2007年11月26日(月) 01時47分

朝営業も増加 漫画で注目、ホストクラブの今を探る朝日新聞

 巧みな話術で女性をもてなす茶髪のイケメンたち——。「ホスト」が芸能界に進出したり、ホストが主人公の漫画「夜王」がドラマの題材になったりと、注目を集めている。その一方で、売上金を申告せず脱税したとしてカリスマホストが起訴され、強引な客引きや女性客とのトラブルなどで何かと世間を騒がせてもいる。ホスト業界の最新事情はどうなっているのか。

 すっかり夜が明けた新宿・歌舞伎町。午前8時すぎ、店内のムードは最高潮を迎えていた。次々と飛び交う一気コール。「ホストは飲んでナンボですからね」。ジャニーズ系の顔立ちの光さん(22)が焼酎のボトルを抱え客の輪に加わった。

 ホストクラブ「歌鯉(かこい)」の営業時間は日の出から約5時間。以前は風営法で禁止された深夜営業(歌舞伎町では午前1時から日の出まで)だったが06年10月に現態勢に切り替えた。他店も徐々に日の出営業に移行した。

 「警察の取り締まりが厳しくなったから」。経営者らは口をそろえる。歌舞伎町では当時、250店以上が乱立し競争が激化。深夜営業の騒音や料金トラブル、客引きへの苦情が相次いでいた。今は130〜150店に減り、3分の2が日の出営業に移ったとされる。

 「最初の3カ月は売り上げが半減したが徐々に客は定着した。法律を守れば客も安心できる」。ホスト出身で経営者の天草湘太郎さん(27)が長い髪をかき上げる。

 指名料、ボトル代を含む最低料金は1万9000円。1本6万円の高級シャンパン「ドンペリ」は月80本の注文がある。

 在籍ホストは約40人で平均年齢は24〜25歳。給料は歩合制で月十数万円からスタートする。

 「頑張った分だけ自分に返ってくる。やりがいがある」と店の一番人気のRIOさん(24)。月数百万円を手にする。

 昼過ぎに戻る自宅マンションは、中野にある家賃21万円の1LDK。夕方までつかの間の休息を取る。自宅ではテレビやDVDを見たり、流行をチェックするためファッション誌を読んだり。近所の定食屋の焼き魚定食がお気に入りで、仕事以外で酒は飲まない。

 「プライベートでは全くもてず、彼女もいません」と話す。「客からの贈り物も少ない。それよりも店で楽しく過ごしてほしい」と優等生ぶりを発揮しながらも「昔から負けず嫌い。ナンバーワンになる方法を24時間考えている」。少年のような顔に真剣味が増した。

 高収入を夢みて業界入りする若者は多いが離職率も高い。歌鯉では毎月15人ほどが入店を希望するが、10人以上が1カ月以内に店を去っていく。

 客はホステスや風俗店で働く女性が多く、全20卓が埋まることもある。仕事帰りにほぼ毎日顔を出すという女性(23)は「寝る間を惜しんでも店に来たい。1回に使うのは4、5万円」。友人の女性(23)は「たわいもない話が多いけど、嫌なことを忘れて明日からまた頑張れる」と笑う。

 「プリンセスのご来店です!」。歌舞伎町に4月、新たな形態の店が加わった。メンズキャバクラ、通称「メンキャバ」という。時間制限がない従来のホストクラブと異なり、時間単位で料金を設定し、指名替えができる。現在、歌舞伎町に約20店あるとされる。

 店内を見渡すと、眼鏡をかけたまじめそうな女性やミニスカートの少し派手めな女性。客はいずれも若い。午前1時までの夜間営業が多く、日の出営業の既存型と比べて、OLなど日中活動する客の割合が高い。

 2時間のセット料金は6000円。焼酎ボトルは6000円、指名料は2000円。「時間帯や料金体系が客のニーズにあっている」と経営者の優河(ゆうが)さん(23)は自信を見せる。

 年収は「一部上場企業の社長と同じぐらい」。新居は3LDK(140平方メートル)の高層マンションで家賃月90万円。約3000万円のフェラーリに加え、ハマー、BMWと3台の愛車を持つ。

 本業以外にも活動の場を広げる経営者は多く、優河さんは店のホストとグループを組んで大手音楽製作会社からデビュー。歌鯉の天草さんは11月に歌舞伎町にレストランバーを出店した。

■脱税、別れ話でけが、壮絶な客引き

 きらびやかな世界の裏でトラブルも絶えない。「カリスマホスト」と呼ばれたホストクラブ経営者(35)は9月、3年間の所得約1億3600万円を隠して約4000万円を脱税したとして東京地検に在宅起訴された。

 10月にはホスト(33)が50代の女性客にけがを負わせた疑いで逮捕された。新宿署によると、ホストに別れ話を切り出された女性が、貢いだ数百万円の返却を求めたところ突き飛ばされ、骨が折れたという。飲食代を払えなくなった女性に風俗店の仕事をあっせんしたり、暴力団とかかわったりする例もあるという。

 客引き行為も問題だ。特に、主な客であるホステスたちが仕事中で店に来ない夜間に激化。同署は9月、ホスト店経営者を集め、徹底した取り締まりを強調した。客引き防止パトロールを展開する歌舞伎町商店街振興組合の城克(じょうまさる)事務局長は「ホストクラブは供給過多状態。競い合うように客引きしている」と話している。

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◆ホストクラブの基礎用語◆

【初回料金】初回客向けに設定された安価な料金。これを利用して様々な店を遊び回る客を、店側は「初回荒らし」と呼ぶ

【男メニュー】在籍ホストの写真アルバム。プロフィルつき。客はこれを見て指名する

【シャンパンコール】高級シャンパンを注文した客に対しホストが行うパフォーマンス。替え歌やバンド演奏などがある

【爆弾】タブー行為や禁句。他のホストの指名客と親密になることや、客の年齢や職業を聞いたり店の内部事情を漏らしたりすること

【売り掛け】いわゆる「ツケ」のこと。期限までに回収できない場合、ホストが自腹で負担し、その分の給料がカットされる

http://www.asahi.com/national/update/1124/TKY200711240256.html