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2007年11月25日(日) 08時00分

色とりどり「リボン運動」 認知度にばらつき PR不足、イメージ薄く産経新聞

 さまざまな色のリボンを、メッセージを込めて身につけたり、ホームページにイラストで掲載したりする「リボン運動」が広がりを見せている。北朝鮮による拉致被害者の救出をめざす「ブルーリボン」をはじめ、児童虐待防止をめざす「オレンジリボン」、乳がんの早期発見と検診受診を啓発する「ピンクリボン」など、色によって願いはさまざまだ。ただ、認知度不足からメッセージが伝わりにくいものや、同じ色で複数の意味を持つものもあり、さらなる啓発が必要なケースも多い。(道丸摩耶)

 ≪メジャー≫

 今月1日、児童虐待防止推進月間に合わせて都庁がオレンジ色にライトアップされた。

 発端は特定非営利活動法人(NPO法人)「児童虐待防止全国ネットワーク」(東京都世田谷区)が進める「オレンジリボン運動」。平成16年に栃木県小山市で起きた児童虐待事件を契機に、翌年から活動が始まった。自治体の協力を得て建物などをオレンジ色の光で包むほか、オレンジのリボンを身につけて虐待防止の意志を表す。

 一方、下着メーカーのワコール(京都市南区)は10月、下着を購入した客に乳がんの早期検診を促す「ピンクリボン」を配布するキャンペーンを行った。客が下着を試着した回数に応じ、がん予防運動組織「日本対がん協会」に一定額を寄付。「ピンクリボン運動」自体はNPO法人「J.POSH」(大阪市中央区)が進めているが、こうした企業の協力により、認知度は急速に高まっている。

 ≪マイナー≫

 米国で80年代に広がったリボン運動が、日本で認知される契機となったのは、北朝鮮の拉致被害者救出をめざす「ブルーリボン運動」だ。

 約5年前、被害者家族や支援者が集会などで身につけ始めたほか、16年の日朝首脳会談で小泉純一郎元首相がつけたことでも知られる。ブルーの色は、北朝鮮と日本を隔てる「青い海」と、両国をつなぐ「青い空」をイメージしている。

 だが、こうした“メジャー”なものとは対照的に、リボンの色のイメージが定着していない運動も数多い。

 性同一性障害への理解を広げる「空色リボン」、社会や家庭からの暴力根絶をめざす「パープルリボン」、妊娠や出産時の事故から母子の命を守る「ホワイトリボン」などがそれだ。

 色の持つメッセージが認知されていないのは、PR不足のほか、色の意味づけが拉致のブルーのように明確でなかったり、外国で始まった運動のために色のイメージが日本人になじみがないケースなどがある。

 ≪重複も≫

 色が重なるケースもある。白色のリボンはアーティストの坂本龍一さんがホームページで広めた「平和をめざす運動」や、阪神大震災から10年たった17年1月に始まった「NPOやNGOを支援する運動」、思春期の同性愛者の自殺を防ぐ運動でも用いられており、現物を見ても、どの活動かわかりにくい。

 オレンジリボンは、「子ども買春・小児ポルノ撲滅運動」のシンボルにも使われている。

 昨年12月から、障害者権利条約の普及をめざす「イエローリボン運動」を始めた日本障害フォーラム(東京都新宿区)でも、「リボンだけだと一般の人にメッセージを伝えにくい。新たにメッセージを入れたワッペンを作ることを検討中」(中村喜長・日本障害者協議会事務局長)と啓発には苦労している。

 中村氏は、「すっかり定着したブルーリボンのように、まずは国会議員などにつけてもらうよう働きかけるしかない」と地道な啓発を強調した。

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