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2007年11月25日(日) 10時00分

インチキ不動産鑑定に捜査のメス日刊ゲンダイ

 サブプライム地獄は、節操のない金融業界と、節操のない消費者がつくり上げた、いかにもアメリカらしい経済破綻。モラルが問われるべきは、何も投資する側、貸す側だけではない。金もないのに大金を借りる方も悪いというのは、確かに一理ある。
 しかし、不動産鑑定で大ボラを吹き、物件価値を実際より高く評価するのは、モラルの範疇(はんちゅう)を出ている。それによってローンの額が上がり、貸す側は契約手数料でせこく儲け、借りた方はローンが払えず個人破産に追い込まれる。結果的にみんな一緒にサブプライム地獄。社会的迷惑犯罪だ。
 ともあれ、こうなるともうめちゃくちゃで、さすがにニューヨーク州では検事総長が乗り出してきた。
 アンドリュー・クオモ同州検事総長によると、不動産鑑定会社ファースト・アメリカン・コープと、その提携銀行ワシントン・ミューチュアル(通称ワム=WAMU)が、合意の上で鑑定価格を引き上げ、実際の価値以上の価格で買い手にローン契約させていたというのだから、呆れて二の句がつげない。地元紙によると、最も顕著な例では、実際の価値が155万ドルの物件を227万ドルと、46%も上乗せ鑑定していたという。
 とにかくこんな状態だから、不動産市場は警戒警報鳴りっぱなし。あるアメリカ人夫婦は、今住んでいるブルックリンのロフトの家賃が急騰するため、マイホーム購入を計画しているが、かなりナーバスになっている。「この銀行はやばいんじゃないのか?」と、いくら被害にあった経験者とはいえ、私に聞かれたって困る。最近ようやく「シティバンクでローンが下りる」と喜んでいたが、その矢先に新聞で「シティグループのCEO、サブプライムの責任とって辞職」みたいな記事が載ったものだから、またビビり始めた。
 友人夫婦のローンどころではない。筆者だって、もう一度ローンを組み替えないと、地獄から這い上がれないんだから。
(ささききん・NY在住)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071125-00000012-gen-ent