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2007年11月23日(金) 02時36分

<クレジット不信>法改正でも「救済」置き去り?毎日新聞

 商品を受け取っていないのに、代金を引き落とされ、お金は戻ってこない−−。悪質業者の倒産が相次ぐ中、こうした被害が表面化している。クレジット会社に払ってしまった「既払い金」を取り戻せる規定が割賦販売法にないためだ。経済産業省は法改正で返還を義務づける方針だが、倒産などで商品やサービスを得られないケースは除外される恐れもある。業者が倒産した場合、消費者は泣き寝入りするしかないのか。

 強引な販売方法が社会問題化し、大阪府警が強制捜査に踏み切った呉服販売会社「愛染蔵」(本店・大阪市、破産手続き中)。大阪府の50代女性は05年11月、展示会で販売店員に取り囲まれ、訪問着を買う契約をした。代金は手数料込みで約105万円。商品が届くのは06年3月下旬で、その半年後の9月にクレジット会社に一括払いすることになっていた。

 だが、商品受取予定日の数日前、愛染蔵は大阪地裁に自己破産を申し立てた。商品は届かず、10月になって銀行口座から代金が引き落とされたのに気づいた。クレジット会社に事情を説明し、既払い金を返してほしいと訴えたが、会社側は求めに応じていない。

 この会社は毎日新聞の取材に「顧客から商品が届いていないという相談があればケース・バイ・ケースで対応しているが、この女性からは相談がなかったので、代金を引き落とした。法律上、既払い金を返還する義務はない」と説明する。

 消費者問題に取り組む弁護士によると、こうした被害はこの女性だけにとどまらない。クレジット会社の中には業者の倒産直後に顧客に連絡し、商品が届いていない場合は引き落としを中止するところもあるが、引き落とされてしまうと取り戻すのは難しくなるという。

 経産省は「クレジット会社が業者の倒産まで予測するのは困難」との理由で、既払い金の返還対象に倒産被害を加えることに消極的だ。愛染蔵被害対策弁護団事務局長の稲葉宏己弁護士は「返還対象から倒産を除外すると、悪質業者は計画倒産に走り、クレジット会社の責任も問われないことになる。実効性のある法改正が必要だ」と指摘する。【クレジット問題取材班】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071123-00000012-mai-soci