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2007年11月22日(木) 11時03分

「踏み字」元警部補、無罪主張 福岡地裁で初公判朝日新聞

 03年鹿児島県議選をめぐる選挙違反事件の関連捜査で、任意で事情聴取していた男性に取調室で「踏み字」を強要したとして、特別公務員暴行陵虐罪に問われた同県警の元警部補浜田隆広被告(45)=福岡市西区=の初公判が22日、福岡地裁(林秀文裁判長)であった。浜田被告は罪状認否で「『踏み字』行為を1回させたのは事実で、被害者に不快な思いをさせたことは反省しているが、こうした行為は陵辱・加虐には当たらない」と述べ、無罪を主張した。

裁判所を出る被告の浜田隆広・元警部補(左)=22日午前11時43分、福岡市中央区の福岡地裁前で

「踏み字事件」初公判の傍聴を終え、会見する被害者の川畑幸夫さん=22日午前11時49分、福岡市中央区で

福岡地裁に入る被害者の川畑幸夫さん(右)と支援者たち=22日午前9時5分、福岡市中央区で

 起訴状によると、浜田被告は03年4月16日、鹿児島県警志布志署の取調室でホテル経営の川畑幸夫さん(62)=同県志布志市=を聴取した際、川畑さんの父や孫らの名と「お前をこんな人間に育てた覚えはない」「早く正直なじいちゃんになって」と自白を促すような文章を紙3枚に書いて足元に置き、両足首をつかみ1回踏ませるなどして精神的苦痛を与えたとされる。

 検察側は冒頭陳述で、浜田被告は川畑さんが黙秘状態に入ったため、「このままでは取り調べが進展しない」と考え、心情を揺さぶろうと、取り調べに同席していた巡査部長が昼食で席を外した間に「踏み字」行為を始めた、と述べた。さらに捜査を指揮した警部が「組織的にやったのではない。捜査報告書で初めて知った」と供述していることを明らかにした。

 一方、弁護側は「当初は戸別訪問などの選挙運動をしたことを認める調書に署名しながら、黙秘に転じた川畑さんに自分と向き合ってほしいとの思いからで、自白を強要するつもりではなかった。陵虐には当たらず、適用するなら公務員職権乱用罪だが、時効(3年)が成立しており、免訴すべきだ」と主張した。

 今年1月、川畑さんは浜田被告を鹿児島地検に告訴。福岡高検が5月から同地検とは離れた立場で捜査し、在宅起訴した。

 「踏み字」を巡っては、川畑さんは国家賠償請求訴訟で「10回以上」と主張したが、浜田被告は「1回だけ、靴先を(紙に)置いた程度」と反論。判決では「少なくとも3回」と認定されていた。弁護側はこの判決について「真実性・正当性に疑問が残る」と述べた。

http://www.asahi.com/national/update/1122/SEB200711220001.html