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2007年11月21日(水) 00時00分

感動×感謝 次世代ポータル創造読売新聞

 ソフトウェアで圧倒的なシェアを誇るマイクロソフトがウェブの世界で攻勢に転じている。ポータルサイト「マイクロソフト・ネットワーク」を軸に、「Windows Live」「Office Live」などのサービスを次々に打ち出す狙いは何か?

サービスとソフトの両輪

笹本 裕  ささもと・ゆう
マイクロソフト執行役常務オンラインサービス事業部長
 1964年生まれ。獨協大法学部卒。ニューヨーク大学経営修士修了後、リクルート入社。99年のクリエイティブ・リンク取締役を経て、2000年MTVジャパンに入社し、02年社長兼CEO。07年2月マイクロソフト執行役オンラインサービス事業部長として入社し、7月から常務に昇格。(撮影・谷口とものり)
——ソフトの独占ぶりに比べれば、マイクロソフトのオンライン・サービスには、明確なイメージがありませんが、目指す目標は何ですか。

笹本 マイクロソフト・ネットワーク(MSN)は、次世代のポータルサイトを目指します。メディアとしての顔を持ちたいのです。例えば、ブロードバンド環境やテレビのデジタル化が進む時代に、動画は重要なコンテンツですね。現在、動画共有サイト「Soapbox」を開発中です。

——「Soapbox」は、「Youtube」とどこが違うのですか。

笹本 Youtubeの後を追うだけとは考えていません。Soapboxでは、ソフトの権利保護を大前提とした上で、SNS動画のあり方を探ります。テレビのモニターでSNS動画を見る時代がくることを想定しているからです。メーンは広告モデルですが、将来は有料配信をにらんだビジネスモデルも出てくるかもしれません。

——MSNが7月にストリーミングで無料配信した地球温暖化防止コンサート「LIVE EARTH」は、かつては有料放送のケーブルTVなどが担った役割でしたね。

笹本 ロングテールの理論で言えば、MSNはヘッドに当たるメジャーな音楽だけを扱うわけではありません。テール部分のストリート系の音楽などを発掘して、Soapboxに乗せることもできます。両者をうまく結び付けるプラットフォームを、MSNは提供できるのです。私が前に勤めていたMTVジャパンは、音楽業界の王道を行くメディアなのでそれができませんでしたけど。

——マイクロソフトのオンライン事業を支えるサービスとソフトの両輪を、「感動×感謝」というフレーズで表現しているのはなぜですか。

笹本 感動はコンテンツを通してユーザーに提供するものですが、コンテンツが面白くても、感謝はされません。感謝されるのは技術です。マイクロソフトでは、感動の部分をMSNが担い、感謝の部分はWindows Liveが担当しています。両者が掛け合わさって、メディアとしての力を持つのです。

——しかし、ポータルサイトのヤフーや検索サービスのグーグルとの差は簡単には縮まらないのでは。

笹本 ヤフーはショッピングやオークションに強く、グーグルは検索に特化しています。MSNは次世代に向けて、パソコンをベースに、テレビやモバイルとも連携できるサービスを考えています。ネットはスイッチングのスピードが速い。流れの速いウェブの世界で、我々も何年もかけてソフトを市場に出すのではなく、ユーザーのニーズに合わせて素早く対応する必要があると考えています。

http://www.yomiuri.co.jp/net/interview/20071121nt0d.htm