記事登録
2007年11月21日(水) 07時52分

「暴行」刑務官、ついたてで顔隠し証言 原告側は批判朝日新聞

 宮城刑務所(仙台市)の刑務官に暴行を受けたとして元受刑者2人が国に損害賠償を求めた訴訟の20日の口頭弁論で、東京地裁(橋本昌純裁判長)は、暴行したとされる刑務官の証人尋問で証言台をついたてで隠し、傍聴席から見えないようにした。国側の申し出を受けた措置で、国家賠償請求訴訟では異例ともいえる対応。原告側の代理人は「公権力の行使が適正だったかを裁く公開の法廷で当事者が顔を出さないのは理解できない」と反発している。

 法務省によると、国側は「訴訟に関係ない暴力団幹部らが傍聴を手紙で呼びかけている」などとする上申書を今月14日に裁判所に提出。同刑務所内で尋問を行うか、法廷に防弾ガラスやついたてを設置して遮る措置を求めたという。

 20日の法廷には傍聴席の前に高さ約1.8メートルの透明の板が置かれ、証言台の三方がついたてで覆われた。原告側が「裁判所の過剰反応だ」として証人尋問に入ることに応じなかったため、橋本裁判長はこの日の審理を約15分で打ち切った。

 証言台を隠す措置は、刑事事件では「犯罪の性質や証人の心身の状態」などを考慮して傍聴席から見えないようにすることが刑事訴訟法で認められている。民事訴訟法では条文化されていないが、性犯罪被害者の損害賠償請求訴訟などで裁判所が同様に判断して遮蔽(しゃへい)を認める場合がある。

 あるベテラン民事裁判官は「裁判所の訴訟指揮の範囲だと思うが、傍聴席からの攻撃や圧力から守るためというのは珍しいのではないか」と指摘する。原告側は「このような措置を安易に認めてしまうと、国はほかの訴訟でも証言台を閉ざしかねない。悪い先例を作ってはならない」と憤っている。

http://www.asahi.com/national/update/1120/TKY200711200408.html