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2007年11月21日(水) 12時52分

審査基準がより厳しくなった建築基準法のため、大きな影響が出ています。フジTV

2005年に発覚した姉歯秀次元建築士による構造計算書の偽造事件を教訓に、2007年6月、建築基準法は審査基準がより厳しいものに改正されました。ところがその結果、審査が長期化して、スケジュールどおりマイホームが完成しないなど、大きな影響が出ています。

東京・渋谷区在住のAさん(43)。
Aさんは2007年2月、東京・目黒区の住宅街に土地を購入した。
地上3階、地下1階からなる一戸建て住宅の設計を建築士に依頼し、完成予定は11月下旬だった。
およそ130平方メートルある土地は、草木を刈り、地鎮祭も終えていて、工事が始まるのを待つだけの状態だが、11月に入っても着工のめどは立っていない。
Aさんは「ここが購入した土地です。今、ずっとこのままの状態です」と話した。
Aさんは3月から荷物を倉庫に預け、仮住まいで生活している。
Aさんは「(家賃など)金銭的な負担もかなり大きいものがありますし、まず、めどがつかない、予定がつかない。いったい、いつ建てて、ここに住むんであろうかという不安ですよね」と話した。
建築業界で今、何が起きているのか。
Aさん宅担当の建築士・B氏は「原因はやはり法改正後の建設業界全体が、どうしていいかわからない状態で、止まってしまっているという形でしょうね」と話した。
姉歯秀次元建築士らの構造計算書の偽造で、耐震強度の不足した物件が次々と発覚した耐震強度偽装事件。
この事件を教訓に、建築基準法は2006年、一定の高さを超える建築物について、構造計算書を二重で審査するなど、より厳しいものに改正され、2007年6月に施行された。
B氏は「法改正前は、まあこの程度の作業内容の書類自体なんですが、法改正後になりまして、こういうまあ認定書とかですね、かなりの膨大な量には、なりあがってます」と話した。
審査の厳格化にともない、検査機関に提出する書類が倍増。
さらに改正前は申請後に修正が可能だった軽微な変更も、改正後は認められず、すべての書類を出し直さなければならないという高いハードルが設けられた。
B氏は「軽微な変更も、じゃあどこまでが軽微なのか。行くたびに行くたびに情報が変わってきているんで、僕らもどこまで用意していいかわからない」と話した。
審査時間の長期化により、新設住宅の着工戸数は法改正後3カ月連続で大幅に減少。
9月は前年度比-44%で、下げ幅は過去最大となった。
こうした現状に、業界内から悲鳴があがっている。
東京・東村山市にある木材販売店では、通常は決まったスペースに建築資材が保管されているが、2007年の夏以降、資材の動きが悪くなり、11月現在、本来は通路として使われているスペースにまで木材が山積みにされている。
東京・東村山市の木材販売店「マルイ木材」でも7月以降、売り上げが3割も減少した。
また長期間、倉庫に置かれた木材が日光で変色したり、湿気で変形する被害が出ている。
「マルイ木材」の溝井裕之代表取締役は「不良品になれば、それは当然返ってきてしまいますから、値段にならないです。価値にならないですから。今の状況が長く続けば、やっていけなくなるところがたくさん出てくるでしょうね」と話した。
こうした中、全国の建築士およそ12万人により構成されている日本建築士会連合会は、11月7日、国土交通省に制度の改善を求めた要望書を提出した。
冬柴国交相は「(改正法を)円滑に運ぶための手だてをですね、迅速に打つ必要があったのかなというふうな反省もいたしてはおります」と述べた。
そして国土交通省は11月14日、ついに法律の一部を緩和した。
軽微な変更の解釈を明確化し、申請後の変更を認めた。
提出用の書類も簡素化された。
改正法の施行から5カ月。
工事の遅れによる資金難などの理由で、これまでに11件の企業が倒産した。
改正法は、今回の緩和で一部改善されたが、二重チェックをする判定員が不足するなど、課題は残されており、国土交通省は早急な対応を迫られている。
highlow highlow 2007/11/21 12:52

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