記事登録
2007年11月19日(月) 06時08分

再建の陰で無駄遣い…不信募る 青森県公費支出問題河北新報

 青森県庁で、通勤区間の出張なのに職員に通勤手当と別に旅費を出したり、正月用に日本酒を購入したりするなど、疑念を持たれる支出が発覚した。長引く景気低迷で収入が減り、県財政再建が叫ばれる中、肝心の足元では「無駄遣い」が見逃されていた。「県民の視点に立つ」という県の行政運営指針は揺らぎ、県民の不信は募るばかりだ。(青森県政取材班)

<旧態依然の意識>
 「横領と大して変わらない。青森の景気は相変わらず良くないし、生活が苦しそうなお年寄りも増えてきた。景気対策や高齢者対策に金を使うべきなのに」。県庁近くの飲食店従業員の男性(60)が県を批判する。

 青森市の主婦(54)も「許せない。ずっと昔から当たり前のように続けてきて…。時代は変わったのに、職員の意識は変わっていなかった」と憤る。

 景気低迷や人口減少に伴う税収減に追い打ちを掛けるように、国が地方交付税の削減を断行。地方自治体の財政状況は厳しさを増し、悪化の一途をたどっている。

 青森県も例外ではなく、「財政再建団体への転落もあり得る」として、2003年度に財政改革プランを策定。公共事業費の40%削減などを掲げ、財政再建に取り組んでいる最中だ。

 「施策や制度が時代の要請にかなうものか、県民の視点で問い直す」「徹底した行財政の簡素・効率化を行う」。必要でもない旅費を精査せずに支出し、県民の理解が得られない物品購入が発覚した今、県が財政改革プラン中で掲げたフレーズは、しらじらしく見えてくる。

 実際、「二重取り」と指摘された旅費約1480万円があれば、県立病院の若手医師を雇い、深刻な医師不足に少しでも歯止めをかけることができた。毎シーズン、約23億円の除融雪費が県財政の重しとなる中で、約20キロの除雪が可能だった。

<職員任せに限界>
 青森中央学院大の木村良一教授(政治学)は「今回の問題は、県に無駄を省く意志が薄いことを浮き彫りにした」と指摘。「まだまだ無駄な公金支出が隠れている気がしてくる。もはや財源が潤沢にあった時代ではないのだから、無駄放置体質を改めるべきだ」と提言する。

 旅費「二重取り」問題については、現在、実態調査が行われている。ただ、他の自治体を見ても、県庁改革は内部の職員任せでは、中途半端に終わることが多い。三村申吾知事が先頭に立ち、「無駄放置体質」にメスを入れられるかどうか、そのリーダーシップが問われている。

[青森県公費支出問題]県の中南(弘前市)など5地域県民局の管内で2002—06年度、青森市在住の職員延べ約550人が通勤区間の自家用車出張で、毎月2000—3万5000円の通勤手当と別に、計約1480万円の旅費を受給。JRなど公共交通機関での出張でも一部、同様の受給が発覚し、「二重取り」と批判されている。このほか正月用の清酒、夏祭り提供用のビールや式典用の津軽塗の購入など、「無駄遣い」の実態が浮かんだ。いずれも河北新報社の情報公開請求で明らかになった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071119-00000008-khk-l02