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2007年11月19日(月) 21時06分

即決裁判、初年は5% 不法残留や薬物など迅速化へ一歩朝日新聞

 刑事裁判の「即決裁判」手続きが昨年10月に導入されてから1年間で、全被告の5%にあたる4000人余がこの制度に基づいて判決を受けたことが、最高裁のまとめで分かった。比較的軽い罪で起訴された被告が罪を認めた時、初公判で一気に判決まで言い渡す仕組みの導入で、「時間がかかり過ぎる」と批判されがちだった刑事裁判のスピードアップが進んだ形だ。最高裁は、さらに運用が軌道に乗れば10%程度まで適用が拡大すると想定している。

即決裁判の流れ

 即決裁判は、重大事件と軽微な事件の審理にメリハリをつけ、裁判員制度が導入されることによる検察側や弁護側、裁判所の負担を軽くする目的もある。司法制度改革の一環だ。

 最高裁によると、今年9月までの1年間に全国の地裁・簡裁で一審判決を言い渡された被告は8万3863人(死亡による公訴棄却なども含む)。このうち検察側が即決裁判の適用を申し立てたのは4210人で、裁判所による適用を受けて判決を迎えたのは4179人だった。

 適用には、本人のほか弁護人の同意が必要だ。即決裁判の場合は懲役・禁固刑には必ず執行猶予が付くことから、裁判所が「実刑が相当」などの理由で認めなかったケースもあるという。

 判決を迎えた被告の主な罪名をみると、(1)出入国管理法違反1536人(2)覚せい剤取締法違反1126人(3)窃盗744人。不法残留や薬物犯罪(初犯)、万引きなどで起訴された被告が多い。

 最も多かったのは東京の地裁・簡裁で、同地裁・簡裁で判決を受けた被告の15.6%にあたる1910人。大阪340人(4.6%)、名古屋269人(6.4%)と続く。東京が圧倒的に多いのは、出入国管理法違反事件が多いのが理由。札幌は54人(2.3%)、福岡は47人(1.3%)で被告数の割に少なく、福井、松山、宮崎、鹿児島は各1人と、地域によってばらつきがあった。

 「起訴から14日以内に判決」が即決裁判の原則だが、実際に14日以内に判決を迎えたのは31.6%。時間が長くかかったのは、弁護人や通訳人の日程的な都合などが影響している。

 裁判が早く終わるため、被告の勾留(こうりゅう)をいたずらに長引かせない効果もある。手続きを経験した弁護士は「接見回数も少なくて済み、弁護活動は楽。これまでだと2〜3カ月勾留されていたのが、3週間程度で出られる」と変化を指摘する。

 ただ、ある刑事裁判官は「被告の更生に影響を与える判決の『感銘力』がなくなってしまわないか」と懸念する。別の裁判官は「真相が解明されず、本来は執行猶予でないような事件が紛れ込んではまずいので、慎重な判断が必要だ」と指摘する。

http://www.asahi.com/national/update/1119/TKY200711190213.html