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2007年11月16日(金) 02時32分

<クレジット不信>信販会社、パート競わせ回収毎日新聞

 クレジット会社には消費者金融と同様に、支払いが滞った顧客に電話で督促する部署がある。その現場を、大手に勤務経験のある近畿地方の30代女性が語った。パートらを競争させ、顧客が次々販売の被害者と分かっても代金を回収する……。「最初から支払えなくなるのが目に見えている人に、何件も契約させている。クレジット会社の責任が問われるべきだ」と女性は訴える。

 女性が勤めていたのは昨夏までの約1年半。求人チラシを見て仕事内容を知らずに応募し、研修後に配属されたのが督促係だった。約100人がそれぞれのパソコンを操作し、延滞者のデータを見て順番に電話する。画面には買い物履歴や支払い残高なども現れ、悪質業者が高額商品を大量に売りつけている実態は推測できたという。

 督促対象となる顧客は延滞期間によりA〜Eの5ランクに分けられる。「A」と「B」は支払日から10日を過ぎたもの。そのままでは金融機関から自動引き落としできなくなるため、「会社全体でパートらに競争させ、数字(支払いの約束)を取るよう要求された」。ここで支払えないと「C」とされ、督促の口調は厳しくなるという。

 最後の「E」は自己破産などの道を選ぶしかないような人で、残額を回収するには「D」段階での交渉が重要になる。次々販売の被害者はこのランクまで落ちることが多い。電話で収入源が年金だと聞き出すと、「今月は偶数月だから年金入ってますね」と逃げ場をふさいだ。「会話が成立せず、明らかに認知症の人もいた」と明かす。

 支払い不能になると商品を回収するが、「悪質業者の商品はほとんど価値がない」。このため、Dランクの顧客には「組み直し」をさせるよう指示されたという。複数の契約を一本化し、月々の支払額を減らすもので、返済期間が長くなるため手数料が増え、顧客の支払総額は膨らむ。

 研修では「恫喝(どうかつ)しない」「留守なら家族に用件を伝えない」などと指導されるが、現場では「食べるものは食べてるでしょ」と声を張り上げ相手を責めるバイトが評価された。「感覚がまひし、ゲームのように取り立てる人もいた」

 支払いの約束を取り付けた件数は数時間ごとにランク付けされ、トップ3には図書券などの賞品が出る。電話のやりとりは社員がパソコンを通じて聞いており、顧客の言い分をすんなり聞くと、厳しく注意される。同時期に入った約30人は1カ月後、3人しか残らなかったという。【クレジット問題取材班】

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071116-00000019-mai-soci