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2007年11月16日(金) 15時45分

広がるネットいじめ 匿名で中傷悪質化読売新聞

 文部科学省が15日に発表したいじめに関する2006年度の全国調査結果で、電子メールやインターネット掲示板を使ったいじめが5000件近くあったことが初めて明らかになった。教育現場は新たな対応を迫られている。

深刻な影響

特定の個人の中傷が書き込まれた掲示板(一部、画像を修整しています)

 今回、文科省に報告されたネットによるいじめの中には、生徒に深刻な影響を与えたケースが多い。

 仙台市内の中学3年の男子生徒は昨秋、ネット上の掲示板で「死ね」「この世から消えろ」などと中傷された。警察が捜査に乗り出し、書き込みをした2人の生徒が家裁送致されたが、男子生徒は不登校になり、結果的に転校した。

 昨年11月には、秋田市内の中学3年の男子生徒がネット上のポルノ小説の投稿サイトに主人公として実名を書き込まれ、その後、一時登校出来なくなった。警察が名誉棄損の疑いで調べたが、誰が書き込んだかは特定できなかった。

 調査の対象時期から外れるが、今年7月に自殺した神戸市の高校3年の男子生徒は、同級生らから携帯電話のメールで再三金を要求されていたほか、ネット上のサイトに裸の写真や悪口を投稿されていたことが判明している。

 「全国webカウンセリング協議会」(事務局・東京)の安川雅史理事長は、「ネットを使ったいじめは、ここ1年で急速に悪質になった」と話す。

多様化

 「(自分を)盗撮した写真をメール送信された」「自己紹介用のホームページに勝手に顔写真を載せられた上、『援助交際をしたい』と書かれた」。同協議会には、連日、子供たちからの相談が寄せられている。

 悪口を書いたメールが次々と同級生の間で転送される「チェーンメール」や、名前やアドレスを偽ってメールを送る「なりすましメール」など、手段も多様化しているという。

 教師や保護者が知らないうちに、学校の名前をつけた掲示板がネット上に開設され、生徒を中傷する書き込みが行われる事例も後を絶たない。「学校裏サイト」と呼ばれ、開設者はその学校の生徒と見られる。

 「きもいきもいきもい」「マジうぜえ、調子乗ってやがる」。神奈川県内の公立中学校の教頭はネットの掲示板をのぞき、がく然とした。複数の人間が、特定の生徒の実名を挙げ、悪口を書き連ねていた。標的になる生徒は一人ではなく、ある生徒の悪口で数日間盛り上がった後、ほかの生徒のうわさ話に移っていく。

 サーバーの管理者に削除を依頼したが、書き込んだ人間がわからないため、無視され、掲示板は今も削除されないままだ。この教頭は「掲示板を学校が管理出来ない以上、生徒たちに個人を中傷しないよう地道に訴えるしかない」と言う。

苦 慮

 ネットによるいじめは匿名だけに、学校は効果的な対応策を見いだせない。

 福島県内の公立中学校の生徒指導の教師は、「メールやネット掲示板は陰口を言う手段の一つになっている。やめさせたくてもだれに指導していいのかわからない」と打ち明ける。

 こうした現状から、「学校裏サイト」を監視して、学校に通報したり、サイトの管理者に削除を依頼したりするIT業者も現れた。今月7日から有料のサービスとして始めたが、すでに教育委員会や私立高などから10件ほどの問い合わせが来ているという。

 群馬大の下田博次教授(情報メディア論)は、「携帯電話を持つ子供の数を考えると、5000件は氷山の一角。子供は遊び半分で悪口を書き込んでいる。書かれる側のダメージを理解させる教育を、教師や保護者が早急に行う必要がある」と指摘している。

http://www.yomiuri.co.jp/net/feature/20071116nt01.htm