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2007年11月15日(木) 00時00分

ビジネスインテリジェンス・ツール市場で競争激化読売新聞


自社のBIツールの特徴を語るマイクロソフトのインフォメーションワーカービジネス本部・横井 業務執行役員本部長

 予算編成や業績のモニタリングなど、ITをビジネスの“攻め”の道具として活用しようという「ビジネスインテリジェンス(BI)」ツールが今、にわかに脚光を浴びている。これまでは専業ソフトベンダーによる比較的高価な製品しかなかったが、9月に入ってマイクロソフトや日本オラクルが低価格製品を擁して本格的に参入。熱い戦いが繰り広げられつつある。

専門家に頼らず分析できるツール

 BIは、企業内に蓄積される膨大な情報を加工・分析してビジネスの可視化を図り、経営や業務の意思決定に活用するITツールとしてかねてから注目されてきた。業務システムからもたらされるデータの分析を専門家に頼らず、経営者や社員が必要な情報を自在に分析し、経営計画や企業戦略などに活用することを目的としている。

 ただし、これまでのBIは、どちらかといえば経営者の意思決定を支援するものとしてとらえられてきた。BIツールを提供してきたベンダーも専業が大半で、経営者の意思決定支援機能の高度化を競ってきたことから、比較的高価な製品が多く、それが市場の広がりを妨げる要因ともなっていた。

 そこへ最近になって、そんなBIのあり方を見直す気運が盛り上がってきた。軸となっているのは、企業のビジネスにおいて意思決定を行うのは経営者だけではない、というとらえ方だ。例えば中間管理職者は、自らが率いる部門で業務効率を最大化するために、様々な局面で意思決定を行わなければならないケースが多々ある。

 さらに一般社員でも、企業の戦略に基づいて、日々の業務の中で自らの作業効率を最大化するための意思決定を図っていく必要がある。特に、日々顧客と接する営業マンなどは、顧客の要望に応じてその場その場で判断しなければ、せっかくのビジネスチャンスを逃しかねない。その意味では、むしろ営業マンを始めとした一般社員こそが、日々の収益獲得活動の中で、最もスピーディーな意思決定を迫られているのだという考え方だ。

全社員の生産性向上目指す

 そんな企業組織におけるボトムアップのBI活用法を提案し、このほど戦略製品を発表したのがマイクロソフトだ。同社が11月上旬に発売する「マイクロソフトオフィス・パフォーマンスポイント・サーバー2007」は、予算管理などのプランニング、達成目標カードの機能を備えたモニタリング、業績を表やグラフなどで可視化する分析・レポーティングといった一連の業務管理サイクルを、単一データモデルを中心に間断なく連携させることのできるBIツールである。

 その最大の特徴について、同社インフォメーションワーカービジネス本部 業務執行役員本部長の横井伸好氏は、「当社のBIツールは、経営者から一般社員の方々まで、全社員によるビジネスの生産性向上を狙ったもの。それが実現できるのは、既に広く使われているエクセルを始めとしたオフィスソフトとの密な連携による利用環境を提供できる当社だからこそ」と強調する。

 さらに、マイクロソフトと同様、この市場の裾野を広げようと、日本オラクルも中堅・中小企業向けBIツールを発売。経営者だけでなく全社員の生産性を向上させようという発想は、マイクロソフトと同じだ。しかも、両社の製品とも、従来のBIツールに比べて価格的に数分の1になると見られており、今後のBI市場は、既存の専業ベンダーの巻き返しも含め、激しいバトルが展開されそうな気配だ。(フリージャーナリスト・松岡 功/2007年10月24日発売「YOMIURI PC」2007年12月号から)

http://www.yomiuri.co.jp/net/frompc/20071115nt09.htm