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2007年11月15日(木) 09時49分

香港・救急車ライド顛末記ツカサネット新聞

私は自他共に認める香港フリークだが、香港で救急車にまで乗ってしまったほどのフリークである。

3年前の12月、ひとつの仕事が片づいた私は1週間の香港の旅に出た。
いつもと違い、余裕がある日程だというのに、私の巡回ペースはフルスピード。着くやいなや尖沙咀を一通り流し、旺角ではDVD屋を巡り、南Y島にまで足を伸ばしハイキングコースを完歩した。

3日目の夜のことである。
シャワーを浴び、まだ寝るには早い時間だな、と思っていたら突然目の前が真っ暗に。間もなく呼吸まで苦しくなってきた。12月で温かい香港だとはいえ、じっとりと脂汗。

とっさに受話器を取り、フロントを呼び出した。片言ならしゃべれるはずの広東語も出てこない。やっと中1英語レベルで「ヘルプ・ミー。」
まもなくフロントから男性が助けに来てくれた。救急車を呼んだから、パスポートを持っていって下さい。それからこれは私の名刺です。なにかあれば連絡を。

異国での単独救急車ライドほど心細いものはない。
救急隊員の男性は横たわる私の向かいに腰掛け、私のパスポートをしげしげと眺めている。
「日本人ですか?(ヤップンヤン?)」と尋ねられる。
なんだかせっぱ詰まった感じはせず、軽く微笑んでいるのがせめてもの救いだ。

救急車はサイレンを鳴らしながらとある大病院に到着した。車椅子に乗せられ、検査室へ。看護婦さんに指先で脈を測られ、同じく指から採血をする。目と喉を見られる。尿を取ってこいと、紙コップを渡される。

ひととおり検査が終わるとこんどはドクターに診てもらう。だが、救急患者ラッシュの時間だったのだろうか?いつまで経っても私の番が回ってこない。
天井の吹き出し口からはなんだか白い物が。そう、冷房である。
香港を始め、中華圏では冷房がおもてなしで、空気を綺麗にしてくれると信じられているらしく、12月だというのにガンガン冷えている。

私は待っているうちに気分の悪いのは直ってきたのだが、こんどは冷えと戦うことになってしまった。寒さで奥歯が鳴ってきた。寒冷地に生まれ育ったことはないせいか、寒さで歯がなるとは苦しくもこのとき初めて経験した。カバンを探ると、いざというときのために持ってきた使い捨てカイロが。やった、これでしばらくは生き延びられるだろう。

これで私の生命力と忍耐力が証明できる、と思ったその時、診察室のカーテンがワイドオープンになり、私は診療台に乗っていた。

先生は舌を見たり、目を見たり、再び脈を測ったりしていたが、そのうちズボンを脱げとお告げになり、薄いビニールの手袋をはめて触診を始めた。うげーーーーー。所変れば診療方法も多分に変るとは・・・。
思うのだが、何のためにー?!Dr.Lohは指をインしたまま、方向を変えていちいち痛いか?痛いか?と確かめるのだった。痛くはないが、四方から攻めるのはよしてくれ。

そして丁度、楽しみにしていた旅行なのにぶちあたってしまった不運な私に向かって「血を止める薬を処方します」とのたまったのだ。もらった薬は、黒と赤と透明のカプセルでおどろおどろしいものだった。せっかくなので一度飲んだが、あとは恐ろしくて飲んでいない。

いちいち勝手の分からない、巨大な病院内をうろうろしながらやっとのことで会計を済ませる。
17000円。 手持ちの金の限られている旅行中になんとうことだろう。だが、ラッキーなことにこの病院ではカードが使えたのだった。

後日、Dr.Lohから渾身の診断書が送られて来たが、少ない金額の請求は診断書なしでも保険がおりることを知った。あのアクロバティックな診察はいったい何だったのか?血液検査も、タンパク検査も、正常だったので苦し紛れの処方だったのだろうか?しかし、深夜にもかかわらず、Dr.Lohはほんとに献身的だった。こちらもどうなるかと思ったけど。

海外旅行保険、やはり掛けていて良かった。それに暖かい香港でも、使い捨てカイロは「非常用に」もっておくべきですね。


(記者:zuenmei)

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