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2007年11月14日(水) 10時56分

褒めて育てるNZ流・NZ学校便りツカサネット新聞

ニュージーランドでは、毎週金曜日の午後に全校集会が開かれる。「アッセンブリー」と呼ばれるこの集会では、先生方の話や連絡事項などのほか、各クラス持ち回りでの小さな発表会が、毎回行われる。歌を歌ったり、リーディングで読んだお話を劇仕立てにしてみたり、自作の詩や作文を読んだり。保護者席は毎回必ず用意され、いつでも参観出来る。

そして、このアッセンブリーでのメインイベントが「Award(表彰)」だ。その週に目立ってがんばった子供たちに、先生から小さな賞状が渡される。スポーツの対外試合でいい成績を残した子、校内のイベントで活躍した子などにも、賞状が出る。息子の学校には更にPrincipal Award(校長賞)というのもあり、校長先生が選ぶ「がんばった子」に、特別なメタルレッドのシールが渡される。そんなこんなで、一回のアッセンブリーで10人以上が表彰されることもある。

ニュージーランドの教育現場は、子供を褒めるのがとても上手だ。息子は幼稚園に在園中、言葉の問題から登園を拒否したことがあった。一日休ませて登園した金曜日、賞状をもらって来た。人生初の賞状は、「幼稚園に来てハローと言いましたで賞」だった。

そう、こうやってひとつひとつ、他人との比較ではなくその子自身の努力した結果を評価してくれるのが、このAwardなのだ。だから、もらった賞状のことを聞くと、実に面白い。「お昼ご飯を食べ終わるのが一番最後でなかったで賞」「長い間、じっと座っていられるようになったで賞」「作文をきれいに清書したで賞」「お友達の手助けを沢山したで賞」「自分の持ち物を大事にしたで賞」などなど。どんな細かいことでも、本人の努力が見えていれば褒めてもらえるのがニュージーランド流だ。

通常の授業の中でも先生方は、良い行動を見せた子供を間髪入れずに褒める。「Very good」「It's very nice」など、ほんの一言だが、そのタイミングの妙と来たら、見事としか言いようがない。親として、先生方の褒め方はいつも、見習わなければ、と思わされる。

小さな賞状をもらうとき、子供たちはそれはそれは誇らしげだ。沢山褒められて育てば、きっと自分に自信を持てる子供になるだろう。自分で自分のことを大切な存在だと思えるだろう。自尊心を築き上げることは、後々の人生の中できっと大きな助けになる。そうして自身の努力を掛け値無しに褒めてもらえた子供たちは、きっと、自分と同じように他人も大事に出来る人に、育ってくれるのではないか。これはおそらく私の願望に近い。児童虐待やDVは、ニュージーランドでもまた、深刻だ。だけど、「褒めて育てる」手法は、長期的に見ればその処方箋になり得る、と私は信じたい。そう信じるに足るだけの子供たちの目の輝きが、アッセンブリーには満ちあふれている。

(記者:江頭由記)


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