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2007年11月14日(水) 10時50分

企業の不祥事と客の思惑ツカサネット新聞

「ビジネス」という言葉が頻繁に口にされるようになって以来、人の仕事に対する姿勢が少しずつ変わっていったように思う。

「ビジネスチャンス」という言葉が生まれた。これは変わり続ける時代に対応し続けようと思えば必要な概念ではある。だがその結果、自社の客にどう喜んでもらうかということよりも、如何にして客に財布の紐を開かせるか・金を出させるかというところに焦点が向いてしまったように思う。『北風と太陽』という童話を思い出すようなシチュエーションも少なくない。

そして曲者なのが「顧客満足度」という言葉である。この言葉から自社の製品を使って喜んでいる客の顔が本当に浮かんでいるだろうか。客の満足=売り上げでは決して無い。昔の職人が作った品からは、良い物をより長く使ってもらおうという思いがにじみ出ているが、今はどうだろう。時に比較的安価で良さそうに見えるものを回転良く買い換えてもらおうという意図を感じることがある。商品開発の視点が喜んでもらいたいという客主体から、とにかく売り上げを伸ばしたいという企業主体にずれていないか。そもそも客主体に商品を開発してもらいたいというのは甘い考えだったろうか。

松下幸之助の「お客様は神様」はまさに名言であったと思うが、その結果「客は神様なんだ」と開き直り無茶をいう客を増やしてしまったのは事実である。逆に店や企業の方から「お客様は何様ですか?」と訊ねたくなることも多々あるだろう。不祥事を起こした企業がマスコミに取り上げられると、すぐさま第二・第三の不祥事が取り上げられ、その企業がさらに叩かれるという事態が最近よく目に付く。確かに企業側が偽装というあってはならないことに手を染めてしまったのは、極めて軽はずみであり許されざる行為である。しかし客の側にも、店や企業は安全かつ良い品を安価で提供すべきという押し付けが無かっただろうか。

安物買いの銭失いという言葉がある。企業の不祥事や偽装問題の陰には、この言葉を忘れて安物買いをした結果、痛い目に遭い文句を言っているひとが実は多いのではないか。何でも出来るだけ安価に、楽に手に入れようとする買い手の欲望も剥き出しになってはいないか。必要なものだけを選んで買うという心がけ、良い物を大切にして長く使おうという思いが薄れているように感じる。私自身不注意な点が多々あるので、買い物に対する姿勢を見直したいと思う。良い店や企業を育てるのは、客に他ならないのだから。




(記者:夏菜)

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