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2007年11月14日(水) 10時40分

ドラえもんはアメリカにはいないツカサネット新聞

周知の方も多いとは思いますが日本が誇るネコ型ロボット「ドラえもん」はアメリカで放映されてません。世界中いろんなところで放映されているのに、アメリカをはじめとする欧米諸国での浸透度はドラゴンボール、ポケモンに比べて圧倒的に低いです。
放映されない理由の筆頭として「ドラえもんはのびたの自立を妨げている」というのが揚げられるそうなのですが、はじめてそれを聞いたとき、なるほどなあと妙な納得をしたのを覚えています。とはいえ、私自身が「のびたの自立を妨げるドラえもん」を事実として納得したわけではありません。欧米人と日本人の感覚の違いを考えた時、そう捉えるのだろうな、という納得です。

いうまでもなくドラえもんはファンタジーです。現実ではない事は誰でも知っている物語であり、いつか助けに来てくれると思ったとかいうような言い訳は裁判で通じません。本気で思ってるのを装って精神鑑定でなんとかしてもらおうなんざ言語道断。と、話がすこしそれましたが、要は絵空事であるという事は、サンタクロースがどのような存在なのかを理解しだした子供なら同時期に理解するという事。しかし、絵空事であっても、子供には多大な影響をもたらすのが漫画やアニメ。無論、オトナであっても影響というものは受けます。

物語の中から何を読み取るか、そして、どういう道徳観念を身に付けるのが望ましいかという観点の違いが、ここに出ているんだなと納得したわけです。勿論、日本においても教育の中に自立を促すという概念は存在しています。しかし、その促し方は各国それぞれ違うわけで、また、身に付けるべき道徳として、日本においての自立は欧米に比べてプライオリティが低いのだと思われます。ここでいう自立とは、一人で起きなさいとか、そういうレベルのものではありません。物事の決定における自立です。日本という国では、大きい決定になればなるほど一人で物事を決めてはならない風潮があります。進路、職業、結婚、住居選択などなど、出来るだけ周囲(主に家族)の理解を得て、出来れば応援や祝福を受けた選択が良しとされます。家族に反対された学校を受験したとか、仕事を選んだとか、恋人との付き合いを反対されたとか、同居するのが当然とされたとか、日常よく聞く話です。
共通してあるのが、自己選択の結果を反対された場合、それを貫き通したからこその武勇伝だったり、いや、むしろ一度反対されたのを乗り越えての結果だからこそ自分の選んだ選択に迷いがなくなるのだとか、やはり結婚は周囲に祝福されたほうが幸せになれるのだとか、なんだかもう、こうなってくると家族は自立の妨げになってこその幸せの踏み絵のようです。何でもかんでも自分で決めて良い。たとえそれが周囲に反対されようと、自分のやりたい事は自己責任においてやってみる。その責任を引き受ける事こそが自立なのだという、そこまでの突出した結果論までは日本の自立教育には含まれてはいない。オトナになっても自立しすぎるのは周囲とぶつかりまくります。そういう土台がある故、「ドラえもんはのびたの自立の妨げ」という概念は日本には存在しないような気もします。

しかし、私は逆に「ドラえもん」という存在は日本人の懐の広さを感じます。その物語から読み取れるものは、自立の妨げうんぬんではなく、弱者の目線への理解です。いくら影響を受けやすい児童だからといって「のびたのくせに生意気だぞう!」という発言を、もっともだもっともだ、僕も私も明日からキライなヤツにそう言っても「いいんだ」とは思いません。スネオのちょっとした嘘を、自分も嘘をついていいという理屈には使いません。スネオのこういう部分ってむかつく、でも、ちょっと自分にもそういうとこあるかも……とか、しずかちゃんってカワイイんだけどオンナ友達いないよね……とか、そういう風に自分の道徳観念の中に清濁併せ呑むような感覚を持ちながら、少しづつ自分なりの道徳観念を培っていってるのだと思います。

周囲との衝突をしてでも勝ち取る自立より、まず、優しさを先に教えたい。ドラえもんはどこまでも暖かい物語であり、心の故郷。それを大事に思える日本って、懐の広い、オトナになっても弱者の視線を忘れずにいること(自分の中ののびたを忘れない)を教えてくれる、やはり日本が誇る名作だと思うのです。世界中で、これからますますグローバルスタンダードは追求されていくでしょう。様々な概念の中で、お国柄は違えど実験的にちょっとだけでも欧米諸国にも放映して貰いたいなあとも思ったりします。その際には映画版のジャイアンの優しさも取り上げてくれると、なお嬉しい。






(記者:藤沢ひなた)

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