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2007年11月14日(水) 10時37分

娯楽産業は観光立国の必需品なのか?ツカサネット新聞

シンガポールは、娯楽が少ない国として良くも悪くも有名である。クリーンな国づくりのため、風俗やギャンブルといった娯楽産業が非常に制限されていることはその主な要因の一つだ。

少し前の話だが、今年1月に、フランスに本店がある「Crazy Horse」というお店のシンガポール店が閉店した。話題性抜群のお店で、ほとんどの人が知っているお店だっただが、オープン後たった1年ちょっとでの閉店となってしまった。実際には最後に駆け込み需要があり、閉店間際は毎日満席、結果的に閉店が1週間延長されたのだが、閉店というイベントがなければ満員御礼なんて考えられないほど空いていたようである。

鳴り物入りでオープンしたこのお店、舞台での女性ダンサーによるショーが見れるという、シンガポールでは珍しいナイトスポットだった。ただ、ショーの内容や宣伝方法について政府による強い規制があるため、席数が450席もあるにもかかわらず営業する上では何かと制限が付きまとっていた。誤解のないように付け足すと、このお店は「ナイトスポット」と言っても女性も気軽に入れるようなお店であった。

その上、値段も高い。ショーの席のチケットがドリンク1杯付きで最低85シンガポールドル(6,000円強)からで、シンガポールではいわゆるヤミ風俗の値段にも相当する値段設定だった。女性ダンサーの確保が難しいシンガポールでは彼女達への人件費も高いのだろう。

興味はあるが、内容の割には値段が高いと言って地元の人はなかなか行こうとしない。結果、外国人観光客向けにPRしたのだが、外国から観光客で、クリーンなイメージの強いシンガポールに風俗を含むナイトスポットを期待して来ている人はあまりいない。

閉店から半年以上経ったが、同様のお店がオープンするといったニュースはその後聞かれない。

<ここでの教訓>

1.国としては中途半端な規制緩和(この場合は国の風紀の乱れを気にした規制緩和)をするくらいならむしろ全くしない方が良い。
2.規制ビジネスへの参入を認可されることは事業者にとってマーケットの寡占や独占を期待できるチャンスだが、中途半端な規制緩和の状態では参入すべきではない。
3.ただ単に希少価値があるとか、オンリーワンだからといって、付加価値を超える値段をつけても客は付かない(希少価値≠高い市場価値)。

シンガポールでは観光客誘致のため、数年後に初のカジノを含む大型リゾート施設が完成する予定だ。政府内でも、ギャンブル施設は観光の目玉とはいえ一方で街の風紀の乱れを招きかねないため反対意見も根強かったようだが、背に腹は変えられない。既に開発者も決まり、着々と開発は進んでいる。
風紀の乱れの回避のために、政策的に外国人観光客はカジノへの入場は無料であるのに対し、現地人からは高い入場料を徴収する計画のようであるが、成否はいかに?国家のイメージ戦略上、成功例の一つであるマカオのようにはならないのではないか。

一方、これに比べれば日本は国土が広いし歴史的建造物も豊富だと言える。東京や長崎など、一部でカジノ構想もあるようだが、そんな人工的で短絡的な観光資源を作らなくても、アピールのやり方次第では充分な観光資源があると思うのだが。また、上記の教訓を逆手にとれば、日本国内で世界に誇れるような高い市場価値のある観光資源は高い値段を付けても良いのではないかと思う。


(記者:イーグル)

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