記事登録
2007年11月14日(水) 10時37分

北京に挑むなでしこに激震とその原因ツカサネット新聞

来年の北京オリンピックに参加する女子サッカーの大橋監督が退任することが濃厚になった。自身と協会の間で強化方針についての食い違いが生じたことが原因とされ、年内で切れる契約の更新はないらしい。

オリンピックまであと1年を切った段階で監督が交代することは、チームに与える影響は少なくない。仮に戦術において同じ視点・方向性を持つ監督が就任したところで、所詮監督も人間である。監督によって選手を見る目は違うので、選手選択の面で前任と全く同じということにはならないだろう。また選手も同じく人間であるがゆえ、大橋監督に対する思いと後任監督に対する思いは全く同じではない。ほんの些細な行き違いがいずれ大きな穴となって崩壊に至るケースは過去に何度もあった。2004年11月の就任以来1枚岩でここまで苦楽を共にしてきたなでしこジャパンではあるが、マラソンで言えば40kmを越えたところで、あるいはスタジアムに入ったところでの監督交代劇は、チームに少なくない不信を与えることになるのではないだろうか。

ただそれよりも気になったのは、契約が「年内」で切れることである。海外サッカーを主に見ている人間からすると、通常の契約期間は6月で切れる。これは各国シーズンが8月から始まり5月で終わること、そしてシーズンオフに国際大会が多く開かれることから、選手や監督が契約問題でこじれることなく動きやすいように配慮されたものなのである。そして契約期間もクラブの場合では差異こそあるものの、代表に関しては2年、あるいは4年といった次の大きな大会までも中期・長期的プランに立った契約が主流、というか当たり前である。

それを踏まえれば、なぜ大橋監督の契約が年内までしか結ばれていなかったのだろうか。

やはりそれは、スポーツにおける文化からくるものではないだろうか。日本におけるプロスポーツといえば、ほんの一昔前までは野球ぐらいのものであった。そして野球のシーズンと言えば春から始まり秋口に終わる、1月から12月までのシーズンである。野球の次に誕生したサッカーは、シーズンの開催時期を世界標準に合わせた秋口スタートではなく、日本文化に合わせた春先スタートに合わせたのである。

そこにどのような意図があったのかは窺い知れないが、いずれにせよ契約も当然1月から12月まで契約が主流になってしまう。だが国内のみで活動している分にはそれでもいいのだが、現在では多くの選手が海外への挑戦を目指している現状と照らし合わせれば、1月スタートの契約は理に適っているとは言いがたい。

選手をシーズン途中に放出することに抵抗するクラブもあるだろうし、結果を残すために海外に出る選手は1月移籍に難色を示す場合も多い。仮に移籍が完了したところで、選手は春先から国内でのシーズンをフルに戦い抜き休む間もなく海外に挑戦することになってしまう。

チームに馴染むため、普段以上に力を使うため精神の休む暇はもちろんなく、5月まで海外シーズンは続くのだから、体力的にも厳しいものになってしまう。シーズンが終わっても夏には代表戦が待ち構えており、クラブとは違った意味での疲労が蓄積され故障部分も治すことも出来なくなることから、これでは選手がすぐに壊れてもおかしくはない。

ここ数年はリーグのスケジュールを海外に合わせる計画が度々議題に上がっている。特に札幌など雪対策などの問題もあり、実現までに少なくとも後数年は必要ではあるだろうが、個人的には早急に実現してほしい課題である。選手や監督にとって、はたまた日本サッカーにとってもヨーロッパとスケジュールを合わせることは多くのメリットをもたらしてくれることだろう。少なくとも今回の女子サッカーで起こったような激震に見舞われることもなく、不信を背負うことも無い。



(記者:adios7210)

■サッカー関連記事1
浦和レッズ、空気の読めないエース

■サッカー関連記事2
イタリアサッカーを蝕む暴力の正体

■関連記事
adios7210記者の書いた他の記事
「スポーツ・スポーツ全般」カテゴリー関連記事

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071114-00000007-tsuka-socc