記事登録
2007年11月14日(水) 10時33分

インクカートリッジはもったいないか? リサイクルインク特許訴訟ツカサネット新聞

11月から年賀状が発売された。もうそんな季節である。年賀状や暑中見舞いなどの挨拶状を、自宅で作成するのが当たり前になったこのごろ。筆者宅では約300枚の年賀状を毎年出すため、年末は自宅プリンタが延々と稼動している。はがき代はしょうがないとしても、インクカートリッジの購入費用は本当にばかにならないのだ。リサイクルカートリッジが売り出された頃から、ずっと使っている。

色は純正品に比べると品質が落ちる、との指摘があるが、自宅用のプリンタ自体、ある程度の性能のものである上、違いを見分けるほど、はがきを出す側も受ける側もシビアではない。リサイクルしてリーズナブル、という二点の方が断然消費者には魅力的だ。リサイクルカートリッジは、インク市場において、約10%のシェアに伸びてきているとのこと。

さて、そのリサイクルインクカートリッジの特許侵害訴訟、このほど、メーカー(キャノン)側の勝訴が確定した。最高裁まで進んだ当訴訟。一審では原告(メーカー)側の請求棄却、二審では逆に原告勝訴、最高裁で二審判決に対するリサイクルインクカートリッジ会社の上告棄却となった経緯は、勝敗だけでなく、判断基準も結論も二転三転して、とても興味深いものであった。

メーカーは、プリンタに関して、本体自体をとても安く販売し、インクカートリッジで益を得るビジネスモデルを採っていることをご存知だろうか? 携帯電話本体一円のモデルと同様だ。つまり、リサイクルインクカートリッジが容認されることは、メーカーとしては死活問題だということ。この判決に、メーカー側はほっと胸をなでおろしたことだろう。

特許や商標などの知財裁判はあまり目立つものではないが、数年前の青色LEDの度肝を抜かれるものすごい金額が出た判決については、印象が残っている人が多いかもしれない。また最近のライトなものでは、お菓子の「ひよこ」の商標権侵害のニュースを思い出す人もいるだろう。

知財裁判が目立たないのは、一般人の毎日の生活にとって直接関係ない、と思われがちだからだ。だから、例えば、海外等で偽ブランド商品を買ってしまった人にとっては、商標権侵害などについて、少しは興味を持つのではないだろうか。この、インクカートリッジの判決については、多くの人の懐に、ちょっとした打撃を与えるかもしれない、最近では最も「身近」な知財判決だったのではないか、と思う。

同時期に他メーカー(エプソン)が起こした特許権侵害訴訟については、メーカー側の敗訴が確定しており、リサイクルが全部不可と判断された、ということではないが、リサイクルインクカートリッジが家電店から全部撤収されてしまう状況は、消費者にとっても環境にとっても不利益なことではないのだろうか。


(記者:チカラハハ)

■リサイクルインク特許訴訟関連記事
リサイクルインク裁判、キャノンの勝利

■関連記事
チカラハハ記者の書いた他の記事
「経済・経済・景気・雇用」カテゴリー関連記事

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071114-00000006-tsuka-bus_all