記事登録
2007年11月14日(水) 15時01分

<都営住宅>入居資格厳格化 遺族に「退去」の誓約書毎日新聞

 公営住宅の入居資格について親子間の継承を認めず厳格化している東京都が、名義人の死亡直後、遺族に「6カ月以内に退去する」との誓約書を書かせていることが分かった。退去期限を守らない入居者に対し、都は損害金の徴収や明け渡し訴訟も辞さないとしている。障害者の子供を持つ世帯や母子家庭の入居者は「親が死ねば住む所がなくなる」と見直しを訴えており、誓約書や法的手段で退去を迫る都の手法に反発が強まっている。【夫彰子】

 誓約書は、名義人の子供など継承が認められない同居者に対し、名義人の死亡を届け出た際に記入・提出させている。A4判の用紙には「使用の承継の許可基準に該当しない者であるため」とし、名義人の死亡日から「6カ月の間に退去することを誓約します」と書かれ、同居者全員の氏名を記入する欄がある。

 北区の都営住宅に40年近く住む男性(46)は父親と2人暮らしだった。父親が9月、74歳で急死、都住宅供給公社に電話で連絡したところ、直後に誓約書が郵送されてきた。男性は身体障害の認定はないが、5年前の交通事故で左足が曲がらない後遺症がある。しかし、電話ではそうした事情は一切聞かれなかった。

 製本関係の工場に勤めるが、時給1200円の非正規雇用で収入は不安定だ。男性は「四十九日も過ぎないうちに誓約書が届き、父の死に加え二重のショックだった。住み慣れた所を出て家賃が高い民間住宅でやっていけるか不安」と話す。

 国土交通省は05年、継承資格を原則、名義人の配偶者に限定し、子供への継承は認めないよう全国の自治体に通知。これに基づき、都は8月に資格を厳格化し、資格がない入居者について、名義人死亡から半年間を退去期限と規定している。

 通知では障害者など住宅困窮者の特例扱いを認めている。しかし、都が定めた特例対象は重度障害者など一部に限られ、この男性や比較的軽度の障害者は対象外だ。都作成の冊子には、特例に該当しない入居者に対し、退去期限後は「損害金を徴収する」「訴訟を提起する」と記されている。 都の担当者は「退去の期限を明記した誓約書を記入してもらっている。(誓約書で)退去期限を早く知らせる方が本人のため」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071114-00000060-mai-soci