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2007年11月14日(水) 10時10分

【法廷から】軽すぎる爆発物製造男の動機産経新聞

 「暇になってやることがなかった」−。
 爆発物を製造、所持したとして、爆発物取締罰則違反の罪に問われた元会社員、寺沢善博被告(38)は、13日に東京地裁で開かれた公判で、犯行の理由をこう供述した。

 爆発物取締罰則違反罪は、最高で死刑または無期、もしくは7年以上の懲役または禁固という重い罰に処される。しかし、寺沢被告が述べた動機は、罪の重さに合わないような軽いものばかりだった。

 寺沢被告は、今年5月から6月にかけて、都内の自宅で爆発物の「トリアセトントリパーオキサイド」(TATP)約92・5グラムを製造、所持していたとして起訴された。

 検察官の質問に対し、寺沢被告は、より大きな破壊力を持つ爆発物を作るために実験を繰り返していたことを明かした。

 被告は、爆発物を製造するための薬品を薬局などで購入し、製造や実験の方法についてはインターネットのホームページから情報を得ていた。

 寺沢被告の法廷供述によると、実験は自宅で行い、「炎が出れば失敗、出なければ成功」。2回目の実験で製造に成功した。だが、それでも満足できなかったのか、再び実験を実施。その理由は「どれくらいの(爆発物の)量まで実験できるか」という興味だったという。この実験では使用したガスコンロが壊れ、破威力が増したことを認識していた。

 被告はさらにエスカレート。「例えば、スイッチ爆破とか缶の中で爆破させるとか、いろいろ条件を変えてやろうと思った」と述べた。

 検察側は9月の初公判での冒頭陳述で、被告が西武新宿線の電車内で「自爆テロ」を計画していたと指摘した。

 検察官はこの日も被告人質問で「電車の中で爆発させようとしていたのでは」とただした。しかし、寺沢被告は「(取り調べの)前日にロンドンの爆破事件をまねしたと言おうと考えていた」と、捜査段階での供述はうそだったと主張。動機は、あくまで興味本位だったと強調した。

 しかし、裁判官から爆発物を家の外に持ち出していたことを指摘され、「自分が死んでしまえば(爆発させても)別に構わないんじゃないかと…」と、公の場で自爆するイメージを少なからず持っていたことも明らかにした。

 もし、被告が本当に公の場で爆発させるようなことがあったらと考えると、不安な気持ちでいっぱいになった。今は、単なる興味さえあれば市販の薬品やインターネットで、誰もが簡単に爆発物を作れてしまう社会なのだ。論告求刑公判は12月25日。検察は社会に向けて、この罪の重さを示すべきだ。(西尾美穂子)

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