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2007年11月13日(火) 10時48分

魔を払う炎の酒ケイマーダ初体験〜スペイン発ツカサネット新聞

近所のバルのオヤジ、ホセ(仮名)が言った。
「ケイマーダ、いいよな。前に、皆集まったときにやったんだよ」
またその話ですか...。

ここに来るたびに話題にのぼる「ケイマーダ」。
ケイマーダとは、ガリシアの飲み物で、リキュールに火を点けて飲む食後酒らしいが、話に聞くばかりで、私は一度もお目にかかったことがなかった。
そうぼやくと、「よし、じゃ、やるか!」とホセ。
「仕事が終わったら、ケイマーダを作ってやるから、これでも飲んで待ってろ」と、すでに空になったグラスに、じゃんじゃんとワインを注いでくれる人のいいホセだ。

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そして小一時間ほどして、そろそろ我々を除けば最後の客になる一組のカップルだけが残る店内で、いよいよケイマーダ作りが始まった。

材料は、オルホ(葡萄の絞りカスから作った蒸留酒)、乾煎りしたコーヒー豆、レモンの皮、砂糖。
これをすべて入れた土鍋に火をつけ、アルコールを飛ばす。

青白い炎がなんとも美しい。
時折、オルホを柄杓ですくい上げ、少し高い位置から再び器に流し込む。
その度にオルホの流れに沿って青白い炎が火柱のように立ち上がり、撥ねた雫が赤く火花を散らすのを飽きもせずに皆で眺める。

さて、適度にアルコールが飛んだら、蓋をして火を消して、これでケイマーダの出来上がり。
同じ陶器でできた小さなカップに移して、あとは乾杯するだけ。

バルの店員は勿論、残っていた客も含めて、全員で乾杯。
カラメルのような香ばしい甘さと、火で飛ばしたとはいえ十分に強いオルホのアルコールで、ほんのり身体が温まる優しい飲み物になった。

そもそもこのケイマーダという飲み物。
伝統的には、悪い精霊を追い払うものとしてあらゆる儀式で作られ、その際、「ふくろう、ヒキガエル、魔法使い、悪魔...」などといった呪文を唱えながら作るのだそう。
この行為自体がちょっと悪魔儀式めいていてるが、あくまで悪魔祓いのためらしい。
スペインというと、とかくフラメンコに闘牛、アンダルシアの白い壁に咲く花、からっと乾いた青い空にギラギラと輝く太陽を思い浮かべがち。しかし、同じスペインではあっても北部ガリシアの鬱蒼とした森では、このようにまったく異なる世界が広がっているようだ。




(記者:沢村奈津)

■写真
写真撮影:沢村奈津記者

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