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2007年11月12日(月) 11時41分

在日米軍再編交付金支給問題を考えるツカサネット新聞

10月31日、防衛省が在日米軍再編にともなう基地負担の代償として、支払う再編交付金の対象自治体33市町村が指定された。この交付金は5月の米軍再編特別措置法の成立を受け、予算計上されたもので、今年度中の支給となる。関係首長は、思わぬボーナスに顔がほころんでいることだろう。不況にあえいでいる各自治体にとって、どんな形であれ国からの補助金はありがたい。

しかし一方で、苦虫を噛み潰している首長もいる。岩国基地を抱える岩国市、普天間飛行場代替施設受け入れに反対する名護市、キャンプ座間を抱える座間市など、6市町村は支給対象から除外された。キャンプ座間関連でいえば、相模原市は支給対象になり、岩国基地では、山口県周防大島町、同和木町、広島県大竹市は対象となっているといういびつな構図が生まれている。考えなければならないのは、今回の米軍再編計画は決定事項である。つまり、反対自治体は基地再編による、目にみえない負担増だけが重くのしかかることとなる。

僕は、座間の星野市長が提案する恒久基地解消策の提示を求める方向には反対する。基地のない日本の存在は、ありえない。今回のことだけでなく、基地存在の意義を数値化してみればいいのだ。岩国市では、住民投票が行われ、基地反対が多数を占めた。しかし容認派も多数存在する。この微妙な問題が多数決の論理で解決されるなんて思ってもみなかったのが現実である。井原市長は基地反対を貫きとおしているが、民意とはこれから遊離してくるだろう。芸予地震で、耐震性の問題が指摘された岩国市庁舎は、現在、新庁舎建設中である。しかし、今年度は、再編受け入れ反対を理由に、建築補助金が支給されない。しかも、再編交付金も支払われない。必然的に負担は,住民に付け替えられる。

10月には岩国基地の米兵が、広島市内で未成年女性を暴行する事件があった。しかし、沖縄とのニュアンスの違いもあり、反対運動は一向に盛り上がらない。藤田広島県知事が「午前3時に未成年者がそんなところにいることが問題だ」と発言して問題になっているが、その通りなのだ。僕もよく知っている場所だが現場のクラブチャイナタウンにその女の子がいたことが問題だと思っている。広島と沖縄の違いもある。

米軍基地の問題は、微妙であり、恒久的解消策は存在しない。だからこそ、存在することを前提に経済効果の観点から考えてみよう。岩国市の住民投票の後、地元財界では、基地容認を旗印に掲げる媒体を存在させようとした。僕にもオファーがあったのだが丁重にお断りした。

確かに、今回の防衛省のアメとムチ施策は乱暴だが、それでも、住民の意思として貫きとおせる自治体があれば拍手を送りたい。僕は、基地の存在が日本国にもたらすメリットが大きいと思っているので、反論はせず、拍手を送るだけだ。

ただ、今回の措置が、自治体の意思としての米軍基地反対と決定事項である再編に伴う予算措置が混同されていることに、防衛省には異議を唱えておきたい。


(記者:小鳥遊城司)

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