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2007年11月12日(月) 21時29分

紀元会リンチ死、発端は「避妊具」 異常な密室空間産経新聞

 長野県小諸市の宗教法人「紀元会」会員のすし店経営、奥野元子さん=当時(63)=が死亡した集団暴行事件。加害者の大半が女性会員だったことや暴行が始まった経緯など犯行状況に謎が多かったが、県警小諸署捜査本部などの調べで「密室」の様子が明らかになってきた。陰湿で執拗(しつよう)なリンチは避妊具が発端だった。一般社会から乖離(かいり)した異常性ものぞいている。

■「お守り」

 「大神様の孫に失礼だ」。9月24日午後8時、70数人の会員が、普段は講義や集会に使われる教団施設の大会議室に集められた。

 怒りの矛先は奥野さんの二女(26)だった。主犯格とみられる窪田康子被告(49)の娘で、教団創設者・松井健介氏(故人)の孫にあたる少女に「財布に入れておくと、お金がたまるお守り」と避妊具を見せていたことを窪田被告によって暴露された。避妊具を神聖なお守りに例えたことに会員が激怒。二女を囲んで殴るけるの暴行が始まった。

 窪田被告はごみ袋に30個ほどの避妊具を張りつけた特製のベストをほかの会員に事前に準備させ、二女に着させた。会議室には男性も十数人いたが、女性が異性の目を気にしたためか「男性は下がっていろ」と声を出し、結果的に女性ばかりが暴行の当事者になったとみられている。

 会員らは二女の夫(30)、奥野さんの夫(35)、長女(37)にも暴行。さらに「娘が悪いのは母親のせいだ」と声が上がり、施設外にいた奥野さんが呼び出された。

■飛びげり

 午後11時半ごろ。座布団に座った奥野さんが「(二女の言動の)どこがいけないのか」と開き直るような態度を見せたため、窪田被告が背中をけり、ほかの会員も次々に暴行。「家族がやるべきだ」と促す声が上がり、夫と長女も奥野さんの暴行に加わった。

 窪田被告は会員に「痛いからここに乗って」と内ももを踏ませた。暴行を渋る少女らには「神子(幹部の世話係)になれなかったらどうする」とあおり、少女らはひじ関節をきめる「腕ひしぎ逆十字固め」や、飛びげりをした。

 暴行は断続的に約1時間続いた。モデルガンの銃口を口に入れる、馬乗りで髪の毛をごっそり抜く−などの陰湿な行為もあったという。

 奥野さんがぐったりすると、「万病に効く」として会員に分け与えられている「紀元水」が口に流し込まれたが、外傷性ショックで死亡した。遺体は「全身打撲という状態で、首から下にまんべんなくあざがあった」(捜査本部関係者)。

■確執?

 避妊具の話が蒸し返されたことが集団暴行の発端になったが、窪田被告は紀元会関係者に「奥野さんの二女夫婦がけんかを始めたので、避妊具の話で二女をいさめようと思った。暴行するつもりはなかった」と説明。しかし、長野地検は「家族間のけんかがきっかけではない」とした上で、避妊具付きのベストを事前に準備していたことなどから、集団暴行には計画性があったとみている。

 教団関係者の中には、奥野さん一家と窪田被告の確執が背景にあるという声もある。奥野さんは紀元会の元京都支部長で、松井氏に気に入られて小諸に移り住んだ経緯があり、松井氏が平成14年に死亡するまで影響力を持っていたという。

 ある関係者は「思ったことを遠慮なく口に出す奥野さんの気性もあり、一家は会内部で浮いていた」と指摘している。

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