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2007年11月11日(日) 01時46分

NOVA譲渡 長期前払いの落とし穴が問題だ(11月11日付・読売社説)読売新聞

 受講生30万人の英会話学校最大手の破綻は、消費者保護のあり方に大きな課題を残した。

 会社更生法の適用を申請していた「NOVA」が、名古屋市の学習塾経営会社に営業譲渡されることになった。

 前払いした400億円超の受講料が戻る可能性はほとんどない。約670の教室のうち引き継がれるのは最大で200にとどまり、当面再開されるのは、わずか30に過ぎない。

 NOVA受講生にとって、極めて厳しい結果である。業界では当たり前の受講料前払いの危うさが浮き彫りになった。国や関係業界は、利用者が安心して学べる仕組み作りに取り組む必要がある。

 利用者が受けたサービスの対価が受講料だ。サービスが提供できなければ、前払い分は全額返還されるべきだ。

 NOVAは、前払いする講義の回数が多いほど、1回当たりの割引額を大きくしていた。だが、中途解約すると、購入済み分の割引額を少なく見積もり、前払い分からの返還額を抑えていた。最高裁は4月、これを違法と判断した。

 6月には経済産業省が、誇大広告などを理由に、一部業務停止を命令した。

 このため、中途解約の請求が殺到し、受講生は10万人も減った。しかし、NOVAには十分な手元資金がなく、返還請求に応じられなかった。請求に備える引当金を、昨年度末で、約18億円しか計上していなかったからだ。

 前払い制は英会話学校に限らず、エステサロンや学習塾などでも、ごく普通のことだ。前払いの受講料を講師、職員の給料や教室の賃貸料の支払い、事務経費など、事業の運営資金に回す。

 NOVAのような問題は、規模はともかく、どこでも起こり得る。関係業界として、前払い金の一定額をプールする指針作りなどを検討してはどうか。

 金融機関と協力し、信託を活用した「返還準備金」制度を設けて、預かり金の一定額を別に管理してはどうか、という議論もある。

 外国語学校の業界団体は、受講契約を1年以内とする自主ルールを定めていた。だが、業界団体に加盟していないNOVAは、最長3年にしていた。

 これが前払い受講料の被害規模が拡大する大きな要因となった。こうした問題にも十分、留意する必要がある。

 業者、業界任せの“自主規制”では、実効性に不安がある。やはり経産省が、業界の指針作りなどを積極的に指導すべきだ。消費者保護の観点に立って、必要なら行政処分などが可能な措置を講じることも検討課題となるだろう。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20071110ig91.htm