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2007年11月11日(日) 13時25分

スペイン芸術の粋! プラド美術館新エリアがオープンツカサネット新聞

スペインが誇る国立プラド美術館。ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコなどスペイン王室の美術コレクションを集めた、堂々たるスペイン美術の宝庫である。

そのプラド美術館では、約5年の歳月をかけた拡張工事を経て、いよいよ10月31日から新規拡張エリアの一般公開を開始した。折りしも、10月31日から11月4日までの期間は、新オープンを記念して“Te Invitamos al Prado”(我々はあなたをプラドへ招待します!)と称して、全館を特別無料開放中。ちょうどスペインでの連休と重なっていたこともあって、5日間の会期中、連日約2万人動員という記録的な人出となった。

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そんな事前情報もあり、入場待ちの列はすさまじいことになっているだろうと予測していた。実際に、テレビのニュースでは長蛇の列を報道していたし、知人も入場に1時間待ったとぼやいていた。しかし、意外にも3つある入り口のうち、Puerta de Murillo(ムリーリョ門)は入場待ちの列はなく、なぜか待ち時間はゼロでうっかり入れてしまった。通常は事前予約者のみの入り口ではあるが、このときは特に何のチェックもなくすんなりと入場することができた。無料開放時には、この門は意外と穴場かもしれない。

さて、何はともあれ、さっそく新規拡張エリアへ直行した。この新規エリアでは二つの特別展示が行われていた。

まずは1階と2階のSALA A〜Cで行われている「19世紀プラド展」。まず目に付くのは、巨大な絵画11点。ロサレスの「遺言を伝えるカトリック女王イサベル」をはじめとして、スケールの大きな作品が並び、あまりの迫力に息を呑む。何しろ3m×4mの作品郡が四方の壁と中央の柱部分を埋め尽す。まさに圧巻の一言。久々に絵画の持つ力に圧倒される思いがした。こればかりは筆舌に尽くしがたい。是非実際の目で見ることをお勧めする。

それにしても展示エリアが不足していたとはいえ、これほどの作品群が倉庫に眠っていたとは、驚きを禁じえない。知名度としては、黄金時代のベラスケスやゴヤなどには劣るものの、19世紀のマドラッソ、ロサレス、ソロージャ、フォルトゥニなどの絵画もまた負けず劣らずに素晴らしい傑作たちであった。

2階のSALA Dで行われているのはゴヤのデッサン展「El toro mariposa」。ゴヤの素描のテーマとしてよく取り上げられている闘牛。羽根を持って空を飛ぶ人や犬など。不気味で悪魔的な魅力がある。これら二つの特別展に関しても、入場のために小さな列が出来てはいたものの、どちらも待ち時間は5分程度で入場できた。

また新エリアの最上階には、サン・ヘロニモ教会の回廊をそのまま残したフロアもある。このサン・ヘロニモ教会はプラド美術館裏に建つ古い教会で、16世紀にカトリック王の命により建てられた。しかし19世紀の独立戦争時に破壊された。その後何度か改築がされ、王家の宗教儀式などに利用されるなど歴史的に重要な意味を持つ教会である。今回その回廊部分を修復・再構築し、この新館と繋げてあるのも見所のひとつとなっている。

尚、これを機に、これまで毎週日曜日だった無料開放が今後、以下のように変更になる。




*平日は18時〜20時
*日・祝日は17時から20時

このように無料開放の選択肢が増えたことで、旅行者にとっても無料開放の恩恵に預かる機会が増えることになる。無料入場を上手に利用して、賢くお得に、スペイン美術の粋に酔いしれよう。


※特別展の開催期間
 「19世紀プラド」展 2008年4月20日まで
 「ゴヤEl Toro mariposa」展 2008年2月3日まで


(記者:沢村奈津)

■写真
写真撮影:沢村奈津記者

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