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2007年11月11日(日) 13時22分

年金問題の本質が見えてきたツカサネット新聞

ずさんな入力、管理で5000万件以上の年金記録ミスが発覚して半年が経つ。その原因を究明する報告書が総務省から発表された。

この中で検証委員会は、記録を正確に保管・管理するという使命感と責任感がなかったことを批判し、歴代社保庁長官、幹部の責任が重いと断罪している。だが、同じことを銀行が預金記録で行っていたとしたらどうだろうか。世の中をひっくり返したような大騒ぎになるだろうし、そんな銀行を行政も許してはおかないだろう。国が同じことをして、誰も責任を問われないというのはなんともおかしなことである。

11月1日に各紙が一斉に報道する前、つまり報告書が発表される前、28日の日曜日にネットで新聞を見ていたら、ある記事が目に飛び込んできて気になっていた。それは、「来週中に発表する最終報告で、歴代の厚生相・厚生労働相や社会保険庁長官の個人責任を明記しない」という内容であった。

オンライン化が進められたのは、79年から89年までである。ということは、その時の責任者はすでに完全引退しているか、墓の下にいる可能性が高いのではないか。責任を問いたくても問えないということなのだろうか。

この年金問題は、昨日、今日で発生した問題ではない。2002年あたりから毎年毎年、新たな年金問題が発生してくるのは、高齢化が本格化し始めたことに原因があるのだろう。平均寿命がどんどん延びて、定年後20年以上もの「第2の人生」ができた。これは年金官僚にとっては予想外というか、脅威であったのだろう。20年間以上も年金を払わないといけないからだ。自分たちが思い通りに使ってきた年金財源を支払いの方に回さなければならない。グリーンピアやサンピアも潰され、天下り先はどんどん減らされてきた。この寿命が延びたことが、年金制度の最大の脅威であったのだろう。官僚の中には現在の超高齢社会の到来を予見していた人もいるだろうが、後の人がなんとかするだろうということであいまいにしてきたのだろう。

もう一個人の責任とか、社保庁の問題とかという状態ではない。現役世代が高齢者の面倒をみるという現在の「賦課方式」の年金制度そのものに、大きな見直しを入れるべき時期に来ているのではないだろうか。恐らく、これまでの問題で国民年金の空洞化は取り返しのつかない段階に来ている。未納率は49%と、2人に1人が払っていないとか、払えていない。これで空洞化が止められるとは到底思えない。すでに年金保険料をとって年金制度を維持しようということ自体が無理な状況になってきている。だからこそ、税金でまかなおうという議論が出てきているのではないか。消費税にしてしまえば、いままで払わなかった人からも年金を取れる。

年金制度の根幹は、きちんと払った人が自分の番になってきちんともらえること。これがきちんと守られないから、年金不信は止められない。この年金制度と消費税、次の衆議院選挙が今後の国民生活の大きなターニングポイントになる。



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(記者:小笠原 俊)

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