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2007年11月11日(日) 02時36分

<クレジット不信>顧客より加盟店が大事…信販元社員の証言毎日新聞

 「会社は顧客より、加盟店が大事だった」。大手クレジット会社の元社員が毎日新聞の取材に応じ、加盟店契約を結ぶ悪質業者との関係を生々しく語った。次々販売などによる消費者被害は、利益を最優先にするクレジット会社の方針の下で拡大していた。

 元社員は関西に住む男性。加盟店の新規開拓や管理をする営業部門で働き管理職も務めたが「クレジットが悪質な訪問販売などに使われ、消費者被害を出していることに疑問を感じた」。6年前に退職した。

 加盟店業者の悪質商法が問題化した際、クレジット会社は販売方法を知らなかったと主張する。しかし元社員は「取引を始めたらすぐに分かる」と語る。顧客や消費者センターから苦情が来るためだ。男性が勤めた会社では苦情は業者ごとに本社に集約されていた。

 不審な加盟店には担当者が調査に出向き、問題があれば取引を打ち切る。だが「急に切ると業者が倒産し、顧客の分割払いが途絶えて損失を抱えてしまう」。そこで使う手が、加盟店への「嫌がらせ」。顧客の支払い能力の審査を厳しくし、新規購入を減らすのだ。

 困った業者は加盟店にしてくれる別のクレジット会社を探す。「業者を生かさず殺さず、取引を徐々に減らし、代金を回収したら逃げる。最後は遅れて参入したライバル社に、不良債権という『ババ』を引かせる」。悪質業者と分かってから契約を切るまでに3年かかることもあるという。

 ある時、加盟店が若者に恋愛感情をちらつかせて高額商品を売りつける「デート商法」をしていると分かった。本社の管理部門に促され、1年がかりで取引を打ち切った。その後、営業部門から「売り上げが減る。なぜ切ったのか」と怒りの電話が来た。「管理と営業に対立があり、営業の方が力が強かった」

 「そもそも無茶な販売をする業者は売り上げが多い。営業成績のために怪しい業者を好む営業マンすらいる」。加盟店からの手数料収入にもうまみがある。「悪質商法が多い寝具や健康食品の業者から、通常6〜7%の手数料を、10%近く取ることもある」と話す。

 一方、顧客の支払い能力に関する審査は「基準があってないようなもの」。支払い残高が膨らんでも、業者に「何とかして」と頼み込まれると、審査を通した。「客と加盟店のどっちを向いてるのか」と聞くと、上司は「そりゃ加盟店だ」と即答したという。【クレジット問題取材班】

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