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2007年11月10日(土) 15時27分

車のナンバー照会、厳格化 プライバシー保護を重視朝日新聞

 車のナンバーから所有者の住所や氏名などが調べられる「自動車登録事項等証明書」の交付条件が、19日から厳しくなる。ボンネットを開けないと分からない車台番号のほか、より詳細な請求目的の記入も求められる。犯罪防止やプライバシー保護の必要が高まったためという。誰でも所有情報をたどれた現行制度が大きく変わることになるが、専門家などからは、公益目的の請求は例外扱いにすべきだとの声も出ている。

運輸支局には19日からの制度変更の案内が表示されている=東京都内で

 これまでは、運輸支局で車のナンバーを記し、免許証など身分を証明するものを示せば申請できた。19日以降は、エンジンルームや車検証に記されている車台番号の記入も義務づけられる。「登録内容の確認」といった理由でも受理されていた請求目的も、「何のために必要なのか」をより詳しく書くことが求められ、職員が不当な目的と判断した場合は交付を断られる。請求者の身元確認も強化する。

 私有地に車を違法放置されている場合に限り、例外的にナンバー記入だけで請求できるが、その場合でも現場の写真や見取り図など「証拠」を示さなければならない。公道の迷惑駐車の場合は「まず警察に相談を」(国土交通省)という。

 道路運送車両法の22条は「何人も証明書の交付を請求することができる」と定めている。同省自動車情報課によると、商取引の安全性確保などを想定しており、「不動産の登記と同じような所有権の公証制度」という。主に中古自動車販売業者や保険会社が利用していた。

 だがここ数年、ナンバーから住所を調べ、ストーカー行為をしたり、所有者になりすましてスペアキーを再発行させ車を盗んだりといった制度の悪用例が目立ってきたという。個人情報保護法などの影響によるプライバシー意識の高まりもあり、昨年2月、厳格化を盛り込んだ法改正案を提出。5月に衆参とも全会一致で可決された。

 車台番号の記入については法の条文に定められていないが、自動車販売業界や保険業界へのヒアリングで反対は出なかったとして、省令による運用規則改正に盛り込まれる。

 同課は「誰でも請求できる制度の趣旨は変わらない」と説明するが、実質的には関係者しか請求できなくなり、制度の大きな転換となる。証明書は、報道機関が公用車や政治家ら公人の車の所有関係などを調べて資産公開の内容を確認したりする際にも利用するため、報道関係者からは「調査報道に打撃だ」との声もあがっている。

 犯罪防止やプライバシー保護という観点では昨年、原則公開だった住民基本台帳の閲覧制度が変わり、厳格化された。ただ、統計調査や新聞社の世論調査など公益性の高い目的の場合は例外とする規定も盛り込まれた。

 行政の情報管理に詳しい「自治体情報政策研究所」の黒田充代表は「悪用防止のため申請条件を厳格化するのは正しい方向だが、公益性のある利用目的の場合への検討がもっとあってよかった。交付の是非を一律に行政が判断できる仕組みもおかしい。情報公開審査会や個人情報保護審査会のように、第三者機関が判断する仕組みもある」と指摘する。

http://www.asahi.com/national/update/1110/TKY200711100146.html