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2007年11月09日(金) 13時15分

【法廷から】女性を襲った男の「言い分」産経新聞

 「『被害者の体を見たら興奮した』と、さっき言ったでしょう。矛盾するじゃないですか」
 検察官が、ひときわ語気を強める。
 「欲望のままに行動してしまいました。でも、やっていません」
 被告の男(47)は、犯行は未遂だったと主張し続けた。
 女性宅に侵入し、酔って寝ていた被害者を襲ったとして、住居侵入と準強姦の罪に問われた被告の初公判が8日、東京地裁で開かれた。
 「言葉の定義を誤解していた」
 捜査段階では、すべての容疑を認めていたという被告だったが、法廷では供述をひるがえした。
 その理由は、「試みたが、緊張のため成功しなかった」からだった。
 法廷での被告の供述などで明らかになったところによると、事件の概要は次のようなものだ。
 8月の朝、被告は泥酔した被害者が、工事現場近くに座り込んでいるのを見かけた。
 工事関係者とともに被害者を介抱していたところ、被害者の自宅マンションが近くにあることが分かり、2人は被害者を連れ帰った。
 「東京にもいい人はいるんだからね」
 被害者を背負いながら、被告はこう声をかけたという。
 被害者をベッドに寝かせ、1度はマンションを後にした被告だったが、30分ほどして舞い戻った。
 「被害者の様子が心配になったので」
 被告は路地裏の塀を乗り越えて敷地に入り、被害者の部屋に侵入した。
 体を触られるなどして、被害者は気がついたものの、ほとんど抵抗できなかった。工事関係者の証言から、ほどなく被告は特定され、逮捕された。
 「『お前のやったことは強姦だ』と警察官に言われ、信じていました」
 こう主張した被告を裁判長が問いただした。
 「被告は大学で法学部に在籍していましたね。定義は知りませんでしたか」
 検察側は「被害者の証言から、犯行の事実は明らか。無軌道、無分別な上に、女性を性欲を満足させる道具としか見ておらず、言語道断で不届き千万だ」と、言葉を極めて被告を非難し、懲役6年を求刑した。
 弁護側は「準強姦罪は成立しない」という趣旨の主張をして、最後まで争った。
 法廷では、事実を裏付ける明確な証拠は示されなかった。裁判所はどのような判断を下すのか。判決は29日に言い渡される。(菊地剛)

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