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2007年11月09日(金) 19時47分

UR無駄遣いの現場「千葉ニュータウン」に行ってみたMyNewsJapan

 10月24日に行われた内閣官房行革推進本部の行政減量・効率化有識者会議で、「民間や地方公共団体でも十分できるものまで行っているのではないか」と指摘されたのが、UR(独立行政法人都市再生機構)。

 調べてみると、04年のUR発足時には、ニュータウン事業の失敗で売れ残っていた土地の評価損で約3兆円もの損失を出した。中でも最大のムダは、総事業費1兆2千億円、半世紀にも渡って続けている千葉ニュータウンの開発のようだ。私は税金のムダ使いの実態をたしかめるため、現地へ行ってみた。

 千葉ニュータウンは、第三セクター鉄道の北総線の、西新井駅から印旛二本医大前の6駅の沿線上に位置する。まず、沿線の印西牧の原駅に向かった。祝日の昼間、駅着くと、降りたのは、私を含めたったの二人だった。改札を出ると、通路があり、北口、南口の二手に出口は分かれている。駅は線路の上にあり、鉄橋で支えられていた。

 よく見ると、通路のそのすぐ横に、真新しい鉄橋があり、URの工事の看板がかかっていた。工事名称をみて、わが目を疑った。ガラガラの駅なのに、通路を新設する工事をすると書いてあったのだ。

 後日、URと印西市に確認したところ、新たに13億円もかけて横断橋の新設工事を進めるとのことで、工事は印西市がURに発注し、URがさらにゼネコンに施工させていて、この工事に国の税金が5億2千億円も使われていると言う。ここまで堂々と税金の無駄がまかり通っているとは…。愕然とした。

 次に、南口の駅前を歩いてみた。だだっ広いロータリーがあり、車が1台停まっているだけで、他に人の気配はない。さらに歩くと、数100メートル先にマンション数棟と小学校があるだけで、他に商店も見当たらない。道路だけがやたらと整備されているのが印象的だった。

 駅北口の方に行ってみると、左手にショッピングセンターがあり、右手には、URの売れ残りの、さら地が広がっている。さら地から10分ほど歩くと、忽然と、URが管理する滝野団地という隔離されたマンション群があった。人口は約3000人。付近にはスーパーが1軒あり、買い物をする住民で溢れていた。他には、床屋とクリーニング屋があるだけだった。

 北口の駅に戻り、今度は、牧の原モアというショッピングセンターに向かった。ショッピングモールを歩くと、テナント従業員の姿ばかりで、客はほとんどいない。ちょうどイベントの日で、女性の歌手が民謡風の歌を歌っていたが、客席にはおじいさんが1人、ポツンと座っているだけだった。ショッピングモール内に、歌声が虚しく響き渡る。

 隣の千葉ニュータウン中央駅にも、行ってみた。ここの駅前は、コンクリートの真新しい街路とロータリーが整備されて、見るからに金がかかっている。すぐ横には、アルカサールという、外観は小奇麗なショッピングセンターがあった。中に入ると、カラオケ店や飲食店がテナントに入っているが、客は少なく、空き室も2つあった。

 後日、私は住人向けの千葉ニュータウン新聞を発行していた小田隆造氏に話をお伺いしたとき、アルカサールについて次のように言っていた。

 「アルカサールは開設直後から入れ替えが目立ち、ここ2、3年だけで、書店、CD屋、ステーキ店、割烹屋、とんかつ屋が、相次いで、店を閉じました。夜逃げ同然で去った業者もいると聞いていますよ。業者は、人口が倍増するというURの計画に期待し、店を出してきましたが、結局、人が増えないから、閉店せざるを得ないのです」。

 住民も含め、ここに引っ越してきた人たちは、人口が増えるというURの計画を信じて来た人が多い。URの責任は重い、と私は思った。

 URは「人が輝く都市」と理念をうたっている。しかし、その言葉とは裏腹に、千葉ニュータウンは、箱モノ利権の鈍い光を放っている、と思った。

 総額14兆円以上の負債を抱えつつ、誰も失敗の責任をとらず、いまだ国交省役人の天下り先となり高い報酬が支払われているUR。現理事長の元建設省次官・小野邦久氏の責任は重く、即刻、更迭したうえで組織を廃止、清算しない限り、赤字の垂れ流しが止まらない。こうした無駄を放置したままで消費税増税はありえない。
(佐々木敬一)


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