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2007年11月09日(金) 10時00分

“安上がりで健康的”高野山の宿坊に泊まった日刊ゲンダイ

 お寺の境内の中にある宿坊に泊まるツアーが密かな人気だ。20代のOLから火が付き、50〜60代の夫婦利用も増えつつある。お寺だけに、閑静な境内と歴史ある建物、中庭のたたずまいなどが魅力だ。お土産売り場もゲームセンターもない。給仕は仲居さんじゃなくてお坊さん。旅館やホテルとはひと味違う、高野山の宿坊に泊まった。

●117寺院中52が宿坊寺院
 真言宗の総本山、高野山には52の宿坊寺院がある(高野山宿坊組合=(電話)0736・56・2616)。大阪のなんば駅から南海特急・こうや号で約90分、さらにケーブルカーで5分ほどのぼると、そこは別世界。静かに時間が流れる宗教の町で約20万基の墓が並ぶ。3年前の世界遺産登録以降、利用客は増加の一途だ。
「若い女性同士や50〜60代の夫婦の利用者が多い。歴史を感じさせる建物や庭に見とれ、本堂で朝のお勤め体験を楽しむ。もちろん精進料理のヘルシーさも魅力です。いま紅葉の盛りですが、真冬に雪景色を見るのもいいですよ」(高野山宿坊組合・植木教記氏)
 写経や瞑想で精神統一をはかる阿字観体験ができるところもある。宿泊費は1泊2食で9500〜1万5000円程度。旅館より安い。

●地元産の安心素材
 食事は精進料理。肉も魚も卵も付かないが、意外に量がある。その日の夜は、野菜の天ぷら、高野豆腐と野菜の煮物、ごま豆腐、大根煮、鍋仕立てのうどん、栗ご飯に寒天のデザートが付いた。どれも野菜の味がシッカリしている。
「食材は野菜をはじめほとんどが地元のもの。栗もそうだし、デザートは紀州の有田みかん、ごま豆腐も吉野葛(くず)、梅干しは紀州梅です」(天徳院・町田英嘉男氏)
 僧侶の世界には精進料理の決まりがある。全部食べずに折り箱をもらい自分の寺に持ち帰り、お坊さんたちで分けて食べるのが昔の作法だとか。こんな話を聞けるのも宿坊ならではだろう。

●6時半から本堂で朝のお勤め
 宿坊は大半が本堂と渡り廊下でつながっており、質素なイメージはあるものの、設備は旅館と変わらない。テレビもあれば、水洗トイレも風呂もある。天徳院の一室は8畳の広さ。2階の窓から大きな庭の中に色づき始めたもみじが見えた。
 朝のお勤めは6時半から。宿泊者も一緒に本堂で約30分間、お経を上げる。こうした非日常体験も宿坊宿泊の楽しみのひとつだ。

≪関東エリアの主な宿坊≫
◆御岳山(武蔵御嶽神社周辺) もともとは神社の宿坊。現在、25軒が残る。秋はキノコ料理が自慢。1泊2食8400〜1万500円。朝7時に御嶽神社で合同の「朝拝」がある(500円)。(電話)0428・78・8973
◆身延山(久遠寺周辺) 20軒が営業中で1泊2食8000〜9000円。久遠寺は日蓮宗の寺。朝6時からお勤めがある。新宿から直通バス(片道2800円)も。(電話)0556・62・0502
◆善光寺(長野市善光寺周辺) 39軒あり、院と付くのが天台宗の宿坊、坊と付くのが浄土宗関係のそれ。1泊2食8400〜1万2000円(2人から予約受け付け)。各宿坊に案内人がいて境内を案内。(電話)026・234・3591

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071109-00000007-gen-ent