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2007年11月08日(木) 11時39分

国家破産後の3つのシナリオツカサネット新聞

前回、ツカサネット新聞に掲載された記事「金融危機後の私なりの未来予想」では、国家破産が起こるとして、その後どうなるのだろうかと私なりに考えてみました。これも多くの著作に影響を受けて、なるべく自分で考えようとした結果なのですが、それはさておき専門家の意見は参考になると思います。今回、「『国家破産』以後の世界/藤井厳喜著」に書かれている経済破綻後のシナリオを見てみます。

藤井氏は破綻に至った後のシナリオを3つ挙げています。それは、

(1)アメリカの経済植民地となる
(2)中国の属国となる
(3)海洋アジアの小国となる

です。1つずつ見ていきましょう。

(1)アメリカの経済植民地については、我々はある程度理解できることだと思います。経済危機に陥った日本の円・株安につけこんで、外資が日本企業の乗っ取りを開始します(最近では新生銀行の例が有名です)。その後は日産のゴーン改革に代表されるアメリカ流の経営を行い、またそれが機能するように法律もアメリカナイズしていくのです。

それだけなら良いじゃないか、と思うかもしれませんが、一つ驚いたことがあったので記載しておきますと、アメリカでHomeland Investment Act(米国本国投資法)というのが審議中(本文中)で、これは外国で得た利益をアメリカに戻せば法人税を約7分の1にしますというものであり、もし日本が外資に乗っ取られてしまうと、その利益がアメリカに逃げてしまうのです。つまり日本がいくら働いても豊かになれず、アメリカだけが豊かになるという仕組みです。

私の調べでは、その後法案は2005年だけの時限立法として成立したそうです。まあよかったですね。しかしアメリカは全世界覇権を狙っているぐらいですから、植民地からは奪えるものは奪っていくというスタンスで乗り込んでくるのでしょうね。

(2)中国の属国は、すぐには考えにくいですが、私は歴史が好きなのでピンと来ました。歴史的に見れば日本は長らく中国に朝貢する属国だったのです。この150年は立場が逆転しただけのことで、長い目で見れば中国の属国は十分ありうるシナリオです。

中国は現在ASEAN諸国と日中韓3国のASEAN+3という市場統合でリーダーとして振舞おうとしています。この市場統合で通貨が人民元になれば、中国の覇権は確立されます。今後の日本の凋落(破産も含め)と中国の飛躍を見ると、そうなる可能性もあります。

藤井氏は中国属国となった後のシナリオとして、共産党政府の支配下で言論統制・思想統制が行われ、下手をすればチベットのように民族虐殺にまで至るのではないか、と述べています。中国の反日教育はすごいらしいですし、彼らが大人になったときに日本がタイミング悪く属国になるとすると、考えられないことではないです。少しぞっとしませんか?

(3)海洋アジアの小国は、日本が破産後も中国・アメリカの間を小国外交で乗り切り、その隙にASEAN諸国と緩やかなネットワークを築くというシナリオです。日本人のルーツと言われる南方系国家と提携し、米を含む食料の融通も含めて文明圏を作っていけば、(1)や(2)よりはマシな選択肢だろうというのです(ただ、破産後の不安定な時期でもありバランスが難しいでしょうけど)。

この場合、破綻後の日本が文明圏のリーダーにはなることはなく、同規模の諸国と連携していくだろうと予測しています。スペイン・ポルトガルはかつて大帝国で今は中小国という感じですが、これと同じように日本も中小国になってしまうということです。

今でこそ世界第2位のGDPを誇る日本ですが、未来永劫続くものではなく、またいつかは中小国になるときが来るのだ、そう思えば案外受け入れられる気もします。おとなしめの日本人には最適案ではないかと私も思いました。

(1)(2)(3)共にいえることですが、今の政治家の方向性なき議論ではこういう結論が出せないと言うことです。(3)を目指すなら中庸の精神を発揮できるリーダーが国民に説明をしなければならないし、逆に(1)であれば、お隣韓国のようにアメリカ化を加速させることを言わなければならないです。
2)はなんでしょう、誰でも出来るのかもしれません。現体制が(2)を落としどころと思って逃げ込むと、国民だけがひどい苦しみを味わうかもしれませんので要注意です。私の意見としては、藤井氏と同じようですが、(3)に向かう外交努力を進めてほしいということです。

なお藤井氏はどうなったら破綻するかも述べています。簡単に言うとそれは心理ゲームであり、国債は安全だと思わない人が臨界点を超えたとき、国債の暴落が始まり、国家破綻(国債利払いの不能)になるというのです。国債はほとんど国内で保有されているので、国民がまだまだ国債は安全だと思っていれば、しばらく破綻にならないかもしれないと見ています。しかし2008年問題は今後クローズアップされることでしょうし、臨界点も近いと見ておくべきかな、と私は思います。



参考: 米国本国投資法(マーケット用語集 ソニー銀行)




(記者:Kazuhiko)

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