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2007年11月08日(木) 14時34分

「カシミヤ100%」業者が敬遠、不当表示発覚相次ぎ読売新聞

 カシミヤを使った繊維製品の不当表示が相次いで発覚したため、「『カシミヤ100%』とするのはリスクが高い」と考え、「100%」の表示を敬遠する業者が出始めている。

 不当表示の原因ははっきりしないが、海外の現地工場で偽装されている可能性が高い。カシミヤの含有割合を証明するため、検査機関への検査申し込みも急激に増えている。(星 聡)

 10月、若者に人気の衣料品販売会社「シップス」(東京)と「ユナイテッド・アローズ」(同)が販売したカシミヤのマフラーで、不当表示が発覚した。

 カシミヤはカシミヤヤギのうぶ毛を使用した繊維。軽くて温かく、肌触りもなめらかだが、1頭から年約150グラム前後しかとれないため、セーターを1着作るには2頭分のうぶ毛が必要になる。1着の値段は2〜3万円前後のものが多い。

 シップスでは英国製の「カシミヤ100%」のマフラーを販売したが、羊毛など、ほかの毛が2割も混じっている商品が見つかった。営業担当者は「信頼している代理店から購入したのに」と首をかしげる。

 ユナイテッド・アローズは、ネパールの工場にカシミヤ70%のマフラーを発注したが、カシミヤがまったく含まれていないことが分かった。

 問題の発端は1月。業界団体のカシミヤ・キャメルヘア工業会が抜き取り検査をしたところ、7社で不当表示が発覚、約85万点が回収される事態となり、業界に激震が走った。中国製が7〜8割を占めるカシミヤ製品だが、流通ルートが複雑で、一部、中国での生産工程でほかの毛が混入したことが判明した以外は、原因は特定されていない。

 以来、国内のカシミヤ製品の約8割を検査している財団法人・毛製品検査協会(東京)の獣毛鑑定センターには、検査結果が「カシミヤ100%」でも「80〜95%」に下げるよう依頼してくる業者が増えた。水口俊彦所長は「サンプルによって検査結果は異なることがある。100%と表示するのは危ないと考えているのでは」と話す。

 業界には、「生産量1万トン。製品量4万トン」という言葉がある。実際の生産量より多くの「カシミヤ」が流通しているという意味だ。2年以上前からカシミヤ100%の商品の取り扱いをやめた大手商社の担当者は、「カシミヤ100%だと、抜き取り検査などで目を付けられやすい」と説明する。

 不当表示問題で、国内に五つある検査機関は大忙しだ。検査員は計十数人。製品から1000本の糸を取り出し、顕微鏡で1本ずつカシミヤかどうかを判定する。1点で1時間以上、費用は2〜3万円かかる。

 同協会でも、昨年より検査の依頼が5割増え、「カシミヤが売れる冬場に向かうのに、検査が間に合わない」と焦りを見せる。

 東京都内の衣料品輸入会社は、「小さい会社にとって検査コストの上昇は痛い。すべてを検査できないので、怖くてカシミヤにはしばらく手が出せない」と話す。同工業会の清水邦保・日本代表は、「信頼できる工場に取引を絞るなど、自己防衛が大事になる」と話している。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071108i405.htm