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2007年11月06日(火) 14時37分

「再犯」6割の現実、出所者支援に課題多く読売新聞

 犯罪件数の約6割を再犯者が起こしている実態が明らかになった犯罪白書。

 法務省は昨年から、性犯罪者などを対象に再犯防止のための矯正プログラムを実施するなど対策を始めたが、高齢者や知的障害者への出所後の支援など課題は多い。

 ■高齢者

 「身寄りがいないから、満期までいるしかない」。無銭飲食などを繰り返し、刑務所に入所していた60歳代の男性受刑者は、そう語ったという。

 今年6月、東京・霞が関で開かれたシンポジウム「医療・福祉と司法の連携を目指して」では、罪を犯した高齢者や知的障害者への支援のあり方が話し合われた。「刑務所にいる方が人間らしい生活を送れる」と、おにぎり一つを盗んで捕まった人もいるという。

 10回以上の犯罪を繰り返した「多数回再犯者」は、1990年には40歳代が41%と最も多く、50歳代(36%)、30歳代(11%)の順だったが、2005年は50歳代(41%)、60歳代(33%)、40歳代(15%)になった。

 65歳以上の高齢者では、多数回再犯者の過半数(51%)が窃盗。白書は、重い刑罰を科されても、同一の犯罪を繰り返し、再犯までの期間が短くなる者が存在すると指摘した。

 ■知的障害者

 今回の白書では触れられていないが、同省が昨秋、全国の大規模刑務所15か所の知的障害者や障害が疑われる受刑者の実態を調べたところ、受刑が2回目以降の285人のうち、60%が1年未満で再犯に至っていた。知的障害者の再犯は、刑務所内の処遇プログラムの改善や、司法と福祉の連携で減らせるとの指摘もあり、厚生労働省の研究班が対策の研究を始めている。

 ■性犯罪

 2004年に起きた奈良県の女児誘拐殺人事件を機に、再犯防止策のあり方がクローズアップされた性犯罪。性犯罪(強姦=ごうかん=、強制わいせつなど)を犯した人が再び性犯罪に及んだ割合は5・1%。窃盗などと比べて低いが、白書は「性犯罪を多数回繰り返す者が一部に存在する」と指摘。法務省は昨年から専門的な処遇プログラムを導入している。

 同省は、性犯罪の再犯の可能性が高い人を対象に、心理技官による個別面接や集団討議を義務化し、犯行を誘発させる要因を自覚させるなどしている。また、幼い子供を狙った性犯罪を起こした人については05年6月から、出所後の居住地などを警察に情報提供する制度も始めている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071106i107.htm