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2007年11月04日(日) 10時40分

農薬を使わない野菜は美味しい?ツカサネット新聞

私が野菜を出荷している農産物直売所には、色々な人が色々な農産物を持ち込んできます。スーパーに並んでいてもおかしく無いような立派なもの、ちょっと虫が食ったけど勘弁してね…という感じのもの。キャベツ1つとってみても大きなもの、小さなもの、スーパーには無い珍しい品種などなど。
もちろん、値付けもまちまちです。

生産者の多彩さがそのまま品物の多様さにつながり、一般のスーパーではなかなか得られない、選ぶ楽しさをお客さんに与えているように思います。

中には「農薬や化学肥料を使っていません」というのを売りにしている生産者もいます。やはり値段は少々高めに設定されている事が多いのですが、それでも一定の評価を得ているようで、少しずつではありますが売れていっているようです。

直売所の店頭で品物を並べていると、お客さんから「やっぱり、農薬を使わない野菜の方が美味しいの?」と聞かれる事がよくあります。結論から言うと、私も分かりません。

店頭にAさんが作った農薬を使ったキャベツがあるとします。その隣に、Bさんが作った農薬を使っていないキャベツがあります。でも、AさんのキャベツとBさんのキャベツの違いは農薬使用の有無だけではありません。使用している肥料の種類や与える量、品種、育てている畑の環境、栽培法法なども全部違います。それらを総合してひっくるめた結果が、AさんのキャベツとBさんのキャベツの味の差なのです。

農薬以外の要因を全部すっ飛ばして「どっちが美味しいの?」と聞かれても、残念ながら答えようが無いのです。まぁ更に理屈っぽい事を言えば、それ以前に「あなたが言う美味しいキャベツとは如何なるキャベツなのか?」 という所から論議しなくてはならないと思いますが…。

非常に厳密な話をすると、農薬使用の有無は野菜の味に僅かながら影響を与えると私は思います。でも、その味の差は肥料の種類や量による差、品種による差よりずっとはるかに小さいとも思っています。

世の中には農薬を使った方がまずいという説もあれば、使わない方がまずいという説もあります。しかし、こういった論議を見るにつけ、私はもっと肝心なところが取り残されているように思えてなりません。

野菜の味を決める大事な要素の一つ、それはいつ栽培したものであるかということです。同じ種類の野菜でも栽培した時期によって、美味しい時もあればそうでも無い時があります。
ある特定の野菜が美味しい時期…その時はその野菜の「旬」なのです。旬かどうかによる味の違いは、それはもう大きい。

たいていの野菜には旬があります。こういった野菜本来の特性と、自然とのつながりを全く無視して、農薬使用の有無という一点にのみスポットライトを当てるような考え方に私はかなり違和感を覚えます。

農薬による味の違いという細かな事にこだわるより、野菜の旬をしっかり把握して美味しい時期に美味しいものを食べるという事に徹した方がずっと自然ではないかと思うのです。

旬の時期は、栽培も容易なので慣行農法でも農薬を使わないか、あるいは使っても僅かということも多いものです。この傾向は、特に葉っぱ物の野菜で顕著です。旬の野菜は、美味しくて農薬使用量が少ないだけではなく、大量に市場に出回るので安くなります。

安くて美味しくて、農薬も僅か…あらためて考えて見れば実にお得です。ですから、消費者の皆さんにはその時々の旬のものをジャンジャンと食べていただきたく思います。


農家は自分が食べる野菜に農薬を使うか?


(記者:つちたろう)

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