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2007年11月04日(日) 10時22分

流行りモノは「シラミ」 NZ学校便り ツカサネット新聞

息子が、学校から臨時のお手紙をもらってきた。一目見て、「またか…」と、ため息。Headlice(アタマジラミ)発生の通知だ。学校の中にアタマジラミが発生すると、こうして全生徒に通知が出される。家で子供の頭を良くチェックして下さい、もしシラミがいたら直ちに駆除を始め、駆除が終わるまでは学校を休んで下さい、という内容だ。ご丁寧にも、シラミ模様の枠で囲まれている。

ニュージーランドで子供が集団生活に入ると、実は、この手の通知を受け取るのは時間の問題。息子の通った幼稚園でも、前の小学校でも「Headlice information letter」をもらった。前の小学校では、よく一緒に遊ぶ仲良したちが次々と寄生され、「次はウチかも…」と薬局に走って、事前に駆除薬を用意したほどだ。そのときは幸い大丈夫だったが、今の学校に来て8か月余り、シラミ発生の通知は4回目。2か月に1回の割合で出ていることになる。全く、冗談じゃない。

実際、アタマジラミの発生は先進国でもそう珍しいものではない。アメリカ、オーストラリア、イギリス、どの国でも普通に発生している。幼児や低学年の子供に多い。

Ministry of Education(教育省)のホームページには、アタマジラミについて詳しく書かれたページがある。シラミは不潔さが引き金になるものではなく清潔にしていても寄生されること、学校が発生源ではなく寄生主が学校に持ち込んで広がること、主な駆除方法や生活上の注意、学校や教師の取るべき対応策、などが並んでいる。中には『オリーブオイルやマヨネーズを使うと、駆除用のくしの通りが良くなります』など、日本人にはちょっと考え及ばないようなものも並んでいる。

先生たちは、いじめにつながらないよう細心の注意を払う。上記のページには、寄生主が特定出来ないような情報提供の方法なども示唆されている。「濃い色の髪の子供が寄生されやすい、ということはありません」という記述もあった。シラミの卵は白いので、髪の色が濃いと見つかりやすい。そのことが「濃い色の髪のほうが寄生されやすい」という、間違った風評を呼ぶのだろう。濃い色の髪をもつ子供のエスニシティ(民族)的な偏りを考えると、衛生面の問題だけでは済まない。正しい情報を、学校と教師と保護者とが共有し適切に対応していくことが、子どもたちの心を守ることにもつながる。

シラミ発生の報を聞く度、日本人の友人たちと「まただよ、やだねえ」「日本じゃ聞いたこともないのにね」などと言いあってきた。戦後にDDTを否応なく振りかけられた祖父母世代の忍耐のお陰で、私たちはこの寄生虫とは無縁の学校生活を送ることができた。ところが、最近のニュースによると、日本でもこのアタマジラミ発生の報告が増えているという。東京都では、18年度の相談件数が1125件で、前年度(720件)の1.5倍に急増したそうだ。日本の学校でも、やがては頻繁に通知を受け取るようになるのだろうか。

アタマジラミはもちろん歓迎されるものではないが、決して特別なものでもない。インフルエンザや風邪と同じ、どんなに注意していたって、もらうときにはもらってしまう。アタマジラミが、日本の学校で新たないじめや差別の温床にならないよう、関係機関の適切な対応をお願いしたい。



参考URL:
New Zealand Ministry of Education
(ニュージーランド教育省・英語)
アタマジラミ 流行の兆し
(Yahoo! ニュース)




(記者:江頭由記)

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