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2007年11月04日(日) 17時13分

SRI投信に陰り 組み入れ銘柄「横並び」に問題?J-CASTニュース

 企業の社会的責任(CSR)や法令遵守態勢などのコーポレートガバナンス、環境問題への取り組みなどに着目したSRI(企業の社会的責任投資)投資信託の人気に陰りが出ている。米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローン問題による国内株式市場の乱高下もあって、基準価格の1万円割れのファンドも出てきた。パッとしない運用成績のウラには、ファンドに組み入れる銘柄がどこも似たり寄ったりなことがあるようだ。

■基準価格1万円割れも

 SRI投信は、地球温暖化防止への取り組みや地域社会への貢献、不祥事への対応などのコーポレートガバナンスといった「企業の社会的責任」が問われ始めた2003年頃からファンドの設定が進み、最近では「テーマ型投信」のひとつとして注目されている。

 どの投信会社の銘柄選定基準も、「企業のCSRの考え方を重視して、当社独自の銘柄選定基準にしたがって評価する」といい、投資の基本方針を東京証券取引所のTOPIXをベンチマークとし、中長期的にこれを上回る投資成果をめざしているという。

 国内株式市場は、サブプライム問題の影響を受けて乱高下を繰り返している。米国の証券大手メリルリンチが2007年10月24日に発表した7-9月期の決算が大幅赤字に転落。25日には野村ホールディングスが9月中間決算期の連結決算を発表し、この中で7-9月期は105億円の最終赤字だったと報告したことで、金融株を中心に軟調になった。

 それもあって、たとえば大和証券投資信託委託の「ダイワSRIファンド」は10月24日の基準価格が前日比44円マイナスの1万2591円。25日が前日比137円マイナスの1万2454円と連日下落。AIG投信投資顧問の「AIG/りそなジャパンCSRファンド 誠実の杜」は10月25日に基準価格を割り込む9877円となった。「誠実の杜」には損保ジャパンや、りそなホールディングス、横浜銀行といった金融株や、ソニーやリコーといった輸出関連株が組み込まれていて、その下落が響いた。

■どれもあまり変わらない組み入れ銘柄

 AIG投信の投資信託本部は、「(サブプライムの影響で)年内は低調でしょうが、これは一時的なものとみています」と説明するが、こうしたSRI投信が振るわないのはファンドに組み込まれている銘柄に偏りがあるからとみられる。

 たとえば、「ダイワSRIファンド」(07年9月28日現在)と「住信SRIジャパン・オープン グッドカンパニー」(06年12月末現在)の組み込み上位銘柄をみると、1位のトヨタ自動車のほか、みずほフィナンシャルグループ、キヤノン、小松製作所が双方に組み込まれていて、「ダイワSRIファンド」とAIG投信の「誠実の杜」と比べても、三井住友フィナンシャルグループや三井物産の名が双方にみられる。

 こうしたSRI投信に組み込む銘柄選定にあたって、CSRを評価しているのは投信会社ではなく、外部のCSR評価会社や大手シンクタンクだ。AIG投信の話では、そのCSR評価会社は世界的にも有名なので「他社でも使っている可能性はあります」という。大和投信委託は「一定の基準でファンドマネジャーが選定します」というが、そこにもCSRの評価会社の存在があることを否定しない。

 たしかに、銘柄選定の最終判断は投信各社のファンドマネジャーが行う。しかし、そのベースとなる基準が同じだったりすると、結果として似たり寄ったりの銘柄に偏ることになる。

 企業のCSRと業績は必ずしもリンクしないので、株式相場が軟調になるなかで基準価格を維持しようとすれば、おのずとCSRよりも業績重視の選定になってテーマからはずれてくる。そうすると、ファンドの特色が薄れて、人気も落ちるという面もあるようだ。


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