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2007年11月03日(土) 02時32分

<クレジット会社>悪質商法を助長 「審査どんどん通す」毎日新聞

 高額商品を大量に売りつける「次々販売」が問題となる中、元訪問販売業者が毎日新聞の取材に、大手クレジット会社に「加盟店になれば、どんどん審査を通す」と勧誘され、独居老人に多数の羽毛布団を売りつけていたことを証言した。この元業者は「複数の個人業者がセールスを断りきれない顧客の『カモリスト』を共有し、売り上げを分け合っている」と話す。クレジット会社が悪質商法を助長している実態が明らかになった。

 証言したのは大手訪問販売会社から15年前に独立し、今年1月まで自営で布団を訪問販売していた50代の男性。「羽毛は原価の20〜30倍以上、1枚数十万円の値で売れる。必要のない人にも売った」という。

 男性によると、「カモリスト」と呼ばれる名簿は大手訪問販売業者の営業マンらが退職する際に持ち出した顧客情報を寄せ集めてそれぞれ作成する。顧客は大半が独居老人で、リストには訪問時に聞き出した年齢や家族構成、預金残高までも克明に記している。「元教諭で知識はあるが、『湿気』という言葉に弱い」「町内会長で体裁を気にするので、家に入りやすい」−−など、顧客ごとの落とし方もある。

 リストは業者間で交換され、ある業者のリストで別の業者が販売に成功すれば、売り上げの一部をリストの所有業者に分配する。顧客の預金が底をつくとクレジット契約による購入を持ちかけ、「ご飯が食べられなくなるところまでむしり取る」。食費もなくなり公営住宅で野菜作りを始めた高齢者もいたという。

 男性は事務所を構えた直後、複数のクレジット会社に勧誘された。ある大手に「うちだけの加盟店になってくれれば、無理が利く。多くの審査を通す」と持ちかけられ、話に乗った。この大手は1人の高齢者に1カ月で3枚の羽毛布団を売りつけても審査をパスさせてくれたという。

 被害者救済に取り組む弁護士に説得され、男性は廃業した。「悪いこととは思ったが、簡単に年何千万円も稼げるのでやめられなかった。クレジット会社は悪質業者と知りながら、いくらでも審査を通してくれた。規制を強めなければ次々販売はなくならない」と話す。

   ◇   ◇

 経済産業省は05年7月、クレジット会社に対し、加盟店の管理強化に努めるよう求める7回目の通達を出した。だが次々販売の被害相談は依然として多く、国民生活センターによると06年度は1万6106件に上る。

 同省は訪問販売を規制する特定商取引法を改正し、必要以上の販売を取り消せるよう定める方針だが、業者名や商品名を変えればすり抜けられるとの指摘がある。割賦販売法改正を論議する産業構造審議会小委員会では、クレジット会社に加盟店調査を法的に義務付けるべきだとの意見が出ている。【クレジット問題取材班】

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