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2007年11月03日(土) 10時00分

この人物のオモテとウラ  清水アキラ(ものまねタレント)日刊ゲンダイ

 ふんどし一丁になったり、全裸になったり、顔にセロハンテープを張り付けたり……。やっていることはお気楽そうでも、ここまで来る道は険しかったらしい。ものまねタレント・清水アキラ(53)のことだ。お笑いグループ「ザ・ハンダース」でワイルドワンズのものまね曲「想い出の渚」を出してから、今年で30周年を迎えるそうだ。区切りの年を記念して、来月21日、グループを再結成し、新曲も発表する。CDリリースは7年ぶり、グループ再結成は、なんと、27年ぶりのことだという。
 ここに来るまでいろいろあった。そもそもスタートからして“逆風”の中だった。当時はまだものまね芸が確立してない時代。プロのお笑い芸人たちからは「ものまねは素人芸」「芸人が歌を歌うのは“逃げ”」とコキおろされた。実際、ハンダースのメンバーは「ぎんざNOW!」(TBS)の「素人コメディアン道場」からの出身者。だから、「想い出の渚」で30万枚を売り上げ、日本有線大賞新人賞を取ったにもかかわらず、ハンダースは3年で解散した。メンバーの桜金造や中本賢らが芝居に“転向”後も、清水ひとりがものまねにこだわり続けた。
 橋幸夫、五木ひろし、村田英雄らのものまねでそれなりに認められてからも、逆風は続いた。「下品だ」「はしたない」という酷評。さらに、某演歌歌手とのゴシップも追い打ちをかけた。
 が、何より最大のピンチはネタ枯れ。ハンダースの頃から100人以上をものまねし、さすがに対象がいなくなった。
 折れそうな心を救ったのは仲間の声だった。ハンダース解散後から「師匠」と仰ぐ清水国明に相談したところ、「とにかく一生懸命やるしかない」と、後の“セロハンテープ芸”につながるヒントを示唆された。ものまね芸でデフォルメし、「気分を害しているに違いない」と想像していた当人たちからも、思わぬ声をもらった。一度しか言葉を交わしたことのない五木ひろしからは結婚式に招かれ、公演先でスレ違った堀内孝雄からは「ありがとう」の掛け声、歌手の安田祥子からは「妹(由紀さおり)にソックリと言われています」という手紙をもらった。
 今や、ものまねはお笑い芸の中のひとつのジャンルとして立派に確立している。「ものまね紅白歌合戦」「史上最強ものまねバトル」など類似番組がひきもきらない。清水には「切り開いてきたのはオレ」という自負がある。
 11月に発売される新曲のタイトルは「今この道を」と「本当にありがとう」。現在の清水の心情をストレートに表したものだ。新曲披露では「毎日忙しい人や一生懸命に生きている人に聞いてもらいたい」とアピールした。
 ものまねファンは、この30年間、清水から「笑い」とともに「勇気」ももらってきた。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071103-00000005-gen-ent