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2007年11月03日(土) 09時02分

中日を日本一に導いた落合の苦悩ツカサネット新聞

11月1日のナゴヤドームでの中日と日本ハムの戦った日本シリーズ第五戦は、中日が日本一に王手をかけていた試合であると同時に緊迫した試合だった。

中日の山井投手が8回までノーヒット・ノーランで、四球も出さずに史上初の日本シリーズ完全試合の大記録達成へ向かっていたからだ。1対0での接戦で球場が緊張感に包まれていた。

日本ハムの若きエース・ダルビッシュの2桁奪三振の気迫の投球を上回る中日の山井投手の冴え渡る投球に、日本中の野球観戦者の9割以上が、9回表の山井投手のマウンドでの続投を希望していた。

しかし、落合監督は、山井から中日の守護神・岩瀬に投手の交代を命じた。この後どうなるのか、球場は信じられないという雰囲気に包まれたが、交代した岩瀬がワンナウトを取ると、球場の声援は岩瀬と中日への応援コールになった。応援コールは、9回に岩瀬が日本ハムの最後の打者を打ち取り、1対0で中日が勝利し、53年ぶりの日本一になると大きな祝福へと変わった。落合監督は胴上げされて、その後のインタビューでも感慨深げに、自分の感情を少しおさえながら、質問に答えた。

「落合監督は山井の夢より、岩瀬の投入で中日が日本一になる夢を実現させた」とマスコミは言う。だが、私はそんな論評に疑問を持っている。

現役時代、三冠王に輝いた落合監督に、山井の大記録を潰してしまったという謝罪の気持ちがないはずはない。「すまない」と、心の中でつぶやいていたはずだ。9回に投手交代を命じた落合監督は、1対0から岩瀬を投入して仮に逆転されても、みずからが全責任を取るつもりだったんだろう。

高校のときには、野球部の先輩からの酷いイジメにもあい、若い選手時代にはロッテで大きな苦労をして、独特の打法で、ホームラン王として開花した。開花した後、中日、巨人、日本ハムと渡り歩いた落合選手(現監督)は、日本ハムでの選手経験もあり、今年の日本ハムの強さ、1対0でも勝てる強さをよく分析していた。

山井投手の大記録という夢、中日が日本一になるという夢、両方をかなえたいーー。しかし、過去に低迷からはい上がってきた日本ハムの恐さを知っている落合監督は、山井投手の夢を切った。

指揮官は、ときとして非情な決断を迫られる事がある。マスコミはよく、落合監督が情を捨てて決断したと書くが、本当は心の中で「すまない」とつぶやきながら、選手の野球人生に関わる決断をしていると思う。

優勝監督インタビューで、「黄金時代の始まりですね!」と、おだてられたが、落合監督は、「今のプロ野球界は、戦国時代、(チームの選手が)良くぞ耐えて強くなった。まだ、中日は日本一の連覇をしたことが無い。連覇をしたい」と口にした。

来年の落合監督は選手たちに「連覇出来なきゃ、本当の強さじゃない」と鼓舞し、全力で夢に向かわせようとするだろう。そして、落合監督は山井投手にどこかでいつか「すまない」と一言を言うだろう。私達は、ときとして、怒りを最大限に体で表現する監督に魅了される。だが、落合は苦悩しながらも責任はとるという、独特の采配方法をするのかもしれない。

中日が53年ぶりの日本一になった今、私達が日本のプロ野球を熱く応援して行くことが、プロ野球人気の黄金時代復活への条件となると思う。

「野球は人なり」そして「野球は筋書きの無いドラマ」だと、今回の試合を見て強く思った。






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(記者:日暮影太郎)

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