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2007年11月03日(土) 08時52分

偉業達成を阻止 プロとはなんぞや!?ツカサネット新聞

中日が日本一を決めた試合でそれは起こります。プロ野球にあまり興味がない方でも知っているでしょう。山井投手の完全試合が阻止された。日本ハム打線ではなく、自らの上司の手によって。私は別の記事でもこの件に少し触れましたが、ここではもっと広い目で議論したいと思います。

まず何故、山井は代えられたのか。中日・落合監督の弁はマメが潰れていたし、1点差だったので岩瀬を投入したとのことです。なるほど、あくまで勝負に徹すればその判断は賢明でしょう。勝負事において確率が高い方を選ぶのは定石です。
しかし偉業達成を待ち望んだファンの高鳴りはどうなる?マウンドを降ろされた山井と過剰なプレッシャーをかけられた岩瀬の気持ちは?

プロの仕事の一つとして、お客さんの要求に応える義務があるはずです。これが何度も繰り返されるようならファン離れはますます深刻になる。例えあの場面でヒットを打たれ、敗戦を喫していようともお客さんが納得して家路につけるならそれでいいじゃないですか。

メジャーリーグを見てみましょう。満員の観客が熱狂したワールドシリーズ。何故ああまで盛り上れるのか。それは常にお客さんを意識した運営を心掛けているからです。独創的な設計と青々とした天然芝が眩いスタジアム、盛り上げ上手な演出とそれに応える観客、地域への密着性。

常にベストを尽くそうとする選手の姿勢も大きな要因ですが、何よりも選手を大事にする。実力のある若手や実績を残したベテランに敬意をはらっている。現役はもちろん、引退した選手にも。

アメリカでは始球式を筆頭とするセレモニーで引退した往年の名選手をよく見かけます。その選手を知らない子供がいても近くにいる大人が教え、大人は自分の青春を思い出す傍らで子供は歴史に触れる。一度鷲掴みにした心は簡単には離れません。こうしたサイクルがメジャーリーグでは百年にも渡り繰り返されている。球団に貢献した選手はコーチや監督として大事に扱うのも好例です。

日本のプロ野球もこうした姿勢は見習うべきです。今現在ファン獲得へ動き出している球団もありますが、それを長期に渡り継続できるかと言うと疑問符がつく。球団関係者は選手とファンのメジャー流出はプロ野球の衰退でもあると自覚しなければいけない。

もちろん、日本のプロ野球にも良い面はあります。ホームタウン以外での主催試合やチームを常にサポートするファンの心は日本が誇れるものだと思います。

球場にしても神戸スカイマークスタジアムは評価できます。オリックスはかつてのフランチャイズをもっと大事にしないと。大阪ドームよりかはずっと良い球場なのだから。選手の負担を考えても天然芝の球場はもっと重宝されるべきです。

宮崎のサンマリンスタジアムも天然芝の球場です。プロ野球の公式戦であまり使われないのが勿体無いぐらいです。地域密着の意味でもソフトバンクはオープン戦だけではなく、シーズンでの主催試合を開催しても良いのではないかと。

他にも良い面はたくさんあります。しかし、どれも決定打にはならない。アメリカのメジャーリーグが明るい蛍光灯なら日本のプロ野球は古臭い豆電球のようなものです。何でもかんでも真似るのはよくありませんが、良いところは残しつつ最高のものを盗み、アレンジする。いつだってこの国はそうやって発展を遂げたはずです。プロ野球にだってやれないことはない。

指導者にしたってそうです。この件でよく球界は人材難だと言いますが、本当にそうでしょうか? メディアの露出が進むと共に無名選手が監督に就く機会が減っているのは無関係なのか。私はそうは思いません。選手としての才能と指導者としての力量は分け隔てるべきだ。前途した文と矛盾したことを言いますが、この点でもメジャーは進んでいる。

田口が所属しているカージナルの将、トニー・ラルーサなどはこの典型です。彼は選手としての自分を21歳の時に見切りをつけ、大学に通い法務博士の学位を得た後に34歳の若さで監督業を始めています。彼は戦術はもちろん、人心掌握術にも長けた名将です。

今の日本のプロ野球は監督が主役になることも多い。これでは本末転倒じゃないですか。主役はあくまで選手で、監督やコーチは選手の能力を引き出すのが仕事です。試合そのものが面白くなければファンサービスも一時のトリックでしかない。

お客様が何を望み、何に不満を抱いているか。各球団の首脳陣はこの点にもっと敏感になる必要がある。プロ野球の今後を占うのは私達、ファン次第だということをお忘れなく。




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(記者:想)

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