記事登録
2007年11月02日(金) 03時00分

NOVA前社長、旧石川銀の見せ金増資に協力読売新聞

 会社更生法の適用を申請した英会話最大手「NOVA」(大阪市)の猿橋(さはし)望前社長(56)がオーナーの「ギンガネット」(同)のグループが旧「石川銀行」(金沢市)の「見せ金増資」に協力、見返りに40億円の融資を受けていたことがわかった。

 同銀行が2001年12月に経営破綻(はたん)し、ギンガ社の資金繰りは悪化。NOVAの保全管理人の弁護士は、ギンガ社がNOVAにテレビ電話機器を高値で販売して数十億円の利益を上げていたと指摘しているが、猿橋前社長がギンガ社の返済資金捻出(ねんしゅつ)のために、NOVAに損害を与えた疑いが出ている。

 石川銀行破綻直前の内部資料によると、同銀行は00年3月〜01年9月、NOVAの複数の関連会社とギンガ社のグループに計254億円を融資。この資金を使って、計130億円分の増資を引き受けてもらった。

 ギンガ社のグループは、過去に同じ社名を名乗り、一部の役員が共通する5社。この際、同銀行から「テレビ電話システム端末の仕入れ資金」名目などで少なくとも40億円を借り入れる一方、同銀行株計52万1500株(計20億1170万円)を引き受けていた。

 融資をして増資を募る行為は、実体を伴わないことから「見せ金増資」と言われ、会社法などで禁止されている。この一部については、石川銀行旧経営陣の特別背任事件の公判でも、検察側に冒頭陳述で不正行為と指摘されている。

 増資の引き受けは、同行の当時の頭取らが、NOVAの猿橋前社長や顧問に要請。前社長側は、引き受け資金を上回る融資をしてもらうことなどを条件に、これに応じたとみられる。ギンガ社の関係者によると、猿橋前社長は常々、「自前の銀行がほしい」と語っていたという。

 同銀行が01年12月に自主再建を断念。金融庁に破綻処理を申請したことから、ギンガ社グループは巨額の借入金の返済を迫られることになった。

 NOVAの保全管理人などによると、ギンガ社は同銀行破綻直後の02年7月にテレビ電話の新機種の発売を開始。仕入れ値の数倍の価格でNOVAに販売することで、5年間に数十億円の利益を得ていた。

 ギンガ社は、この取引以外の事業はほとんど行っていなかったにもかかわらず、借入金を急速に返済。民間の信用調査会社によると、同銀行から営業譲渡を受けた地方銀行からの借入金は今年4月時点で2億5000万円で、利益の大半は返済に回ったとみられる。

 ギンガ社は自宅でテレビ電話を使ってレッスンを受けられる「お茶の間留学」のシステムを開発・販売。全株式のほぼ100%を猿橋前社長が実質的に保有している。NOVAの保全管理人は「ギンガ社との取引は特別背任の疑いがある」と指摘しているが、前社長がオーナー会社を守るために、NOVAの資産を流出させた疑いが出ている。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071102it01.htm?from=top