記事登録
2007年11月02日(金) 15時23分

中国製品は危険? NZテレビ番組のやらせツカサネット新聞

ニュージーランドに住んでいる。移民の立場から、オークランドの風景を書いていきたいと思う。

昨今のアンチ中国製品ヒステリーに大きく加担したと思われる、ニュージーランドのテレビ番組の報道だが、そうそうにやらせであることが分かった。

事の起こりはニュージーランドのチャンネル3の「ターゲット」という番組の内容である。当地では、テレビ番組オンエア前日までに新聞などと結託し、その報道内容をセンセーショナルに伝える向きがある。この中国製衣料品とは、お茶の間のみなさんならたいてい行ったことのある大手ディスカウントストアーで売られている子供服。キャラクターのついたパジャマなどから、任意の検査の結果、発がん物質で有害なホルムアルデヒドが通常の900倍の濃度で出たという報道である。

このセンセーショナルなニュースは、世界中をかけまわった。

強烈な視聴者からの批判、国外の報道機関の反応を受け、政府消費局が同じ衣料品を再度同じ方法で検査したところ、99点中97からはホルムアルデヒドは検出されず、2点からは100ppmの濃度が検出された。この濃度は、水洗いすれば落ちてしまう程度とのこと。また番組「ターゲット」が通常の900倍としたのは、ホルムアルデヒドが使われていないというレーベルがついている商品を基準としたもので、そのため数値が莫大に大きなものになったのだろうという見解が発表された。

政府として報道機関に謝罪請求はしないというので、番組側も強気のコメントをしている。標準の意識がなかったところへ一石を投じてやったのだというのだが、小売店側は納得がいかない。これによって被った損害をどうしてくれるのだと言って、平行線である。

当地ではマスコミの規模も小さい。田舎ではそれほどテレビのチャンネル数も多くはない。国営放送局は大きな影響力を持つので、民放は都市型の視聴者をターゲットにセンセーショナルな番組を作る傾向もある。もちろんテレビなんか見ないという人もいるわけなのだが…。この報道自体、ニュージーランドの国内製品を買おうキャンペーンの最中にあわせて放映された。同時に地方の工場がどんどん閉鎖され、海外へ、中国へと移動していく中での報道である。

当地もドル高、最低賃金の押し上げ、国内でモノを生産して売っていくには、儲けが出にくい状況である。そこにきて、安い大量生産の中国製品がどっと押し寄せている。いまさらであるが、小さい国が淘汰されるときのスピードはものすごいものである。

そもそも、報道機関が偏った報道を進めるとき、「あれ? おかしくはないか?」と疑問に思うのがバランス感覚。だが最近は、徹底的な正義をふりかざし、ひとつの場所に向かってお茶の間が全員で相槌を打つという光景がよく見うけられる。何が危険で何が危険じゃないのか。いくらくらいの値段の子供服を買えるか買えないかは、私自身が決めたい。テレビやネットに決められるなんて…どうかしている。

ニュージーランドといえば、牧歌的な景色、のんびりとした生活を思い描く人も多いと思う。だが、日本が過去10年で変わったように、ニュージーランドもまたこの10年を思い返すと大きな変化が起こっている。人が変わるのか、時代が変わるのか。日常の生活やニュースの中から、最近のニュージーランドをお伝えできればと思っている。


(記者:大空)

■その他ニュージーランド関連記事
江頭由記記者ニュージーランド事情

■関連記事
大空記者の書いた他の記事
「海外・海外からの便り」カテゴリー関連記事

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071102-00000001-tsuka-int