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2007年11月02日(金) 15時41分

タバコの警告表示問題 面談拒否のJT、現状肯定の財務省、権限ない厚労省MyNewsJapan

 国内タバコの健康警告表示は文字だけで、面積も30%に過ぎない。しかし、日本も2004年に批准した「タバコ規制枠組条約(FCTC)」では、主たる表面の50%以上を占めるべき、絵・写真・図を含めることができる、などと定めている。

 NPO法人「日本禁煙学会」は、主催した「タバコパッケージの健康警告デザイン」コンテストに入賞した27作品を新たな警告表示として採用するよう、10月23日に理事長の作田学氏が財務省を訪問。筆者も同行させてもらった。

 しかし、タバコ行政の責任者である理財局総務課たばこ塩事業室長の長友謙治氏は、入賞者の作品を持参して採用を訴える作田氏に対して、「日本では今の注意文言でFCTCの規定に反してはいないと考えています」と答え、面談は10分足らずで終了だった。
 
 そこで筆者は、「日本たばこ産業株式会社(JT)」に電話(03-3582-3111)し、お客様相談センターのタカムラ氏(男性)に面談を申し入れた。

−−日本禁煙学会のデザインコンテスト受賞作品を持参するので、警告表示について改善をお願いしたい。

タカムラ「私どもは法令を遵守しながら表示を行っています。また、タバコのデザインについてご提案をいただく際には、資料を送っていただき、必要があればご連絡することもあります。今回のお話に限って個別の意見交換をするのはお断りしたい。

 健康リスクについては、法令を守りながらお知らせをしている状況の中で、タバコの固有のパッケージのデザインの中で伝えていくというのは現在考えておりません。」

−−今のところ文言だけですよね?

タカムラ「はい。いずれにしても、私どもは愛煙家のみなさまにタバコを楽しんでいただきたいと思って各タバコを作っております。お楽しみいただくために作っております会社です。健康リスクのある製品ではありますが、法令を守りながら楽しんでいただきたいと思っています。そもそも、タバコを禁煙するという趣旨のデザインというのは、私どものタバコのデザインとはそぐわないと思っています」

 以上のやりとりを日本禁煙学会の作田学理事長に伝え、感想を聞いた。

作田「このJTの発言は問題ですね。なぜかというと、肝心の健康警告情報を伝えなければならないのは、子供たちであるわけです。

 12〜16歳の子供たちが現在のタバコパッケージの情報をきちんと受け止めているとは到底考えられません。JTは結局、子供たちには知らせなくて良いと考えているのでしょう。これは大問題です」

 厚生労働省が1999年に初めて行った未成年者の喫煙率調査では、同年の15歳から19歳までの喫煙率は男性19%、女性4.3%。高校3年生では、男性36.9%、女性15.6%に達している。

 現在8種類あるタバコの注意文言にも「未成年者の喫煙は、健康に対する悪影響やたばこへの依存をより強めます。周りの人から勧められても決して吸ってはいけません」とある。この文言を見ても、「愛煙家のための製品なので、禁煙するという趣旨のデザインはそぐわない」というJTの説明がおかしいことがわかるだろう。

 続いて厚生労働省にも問い合わせ、生活習慣病対策室(03-3595-2245)の担当係長ハギモリ氏(男性)に話を聞いた。

−−写真や画像を使ったより強い警告表示が求められると思いますが?

ハギモリ「そうですね。私もタバコを吸いませんが、そういう警告表示を見れば、吸っている人もあまりいい気はしないと思います。自分の身近なところにタバコを置いて、その表示が人の目に触れれば気分を害することもあるでしょう。FCTCが求めるような表示の形まで踏み込んでいければ、よりいい方向だと思います。

 ただ、厚労省にはその決定権がないのが現行法の立場なので、財務省から意見を求められれば、我々の思っていることは積極的に発言していきたい」

−−逆に、厚労省から財務省に積極的に発言することはできないのですか?

ハギモリ「FCTCの批准を契機に「たばこ対策関係省庁連絡会議」を設置しました。その会議では財務省に対して意見を言うようにはしています」

−−今までに何回開かれたのですか?

ハギモリ「平成17年に第1回、18年に第2回が開かれました。今年はまだ開催されていません」

 2007年7月にタイでFCTC第2回締約国会議が行われ、来年には第3回が南アフリカで開催されることも決まっている。早急かつ頻繁にたばこ対策関係省庁連絡会議を行い、健康警告表示を含めたJTへの指導が必要となる。

(伊勢一郎)


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