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2007年11月02日(金) 22時56分

調書流出、鑑定医を起訴 著者は不起訴 奈良地検朝日新聞

 家族3人が死亡した昨年6月の奈良医師宅放火殺人事件をめぐり、長男(17)=中等少年院送致=の供述調書などを引用した本「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)が出版された問題で、奈良地検は2日、少年審判で長男の精神鑑定医を務めた崎浜盛三容疑者(49)=京都市左京区=を刑法の秘密漏示の罪で奈良地裁に起訴した。著者でフリージャーナリストの草薙厚子氏(43)は嫌疑不十分で不起訴処分とし、捜査を終えた。

 起訴状によると、崎浜医師は昨年10月5、6、15日ごろ、草薙氏の依頼に応じ、京都市内の自宅やホテルで、長男の成育歴や学校の成績、両親の離婚の経緯などを記した供述調書のコピーなどを見せたほか、自身が作った精神鑑定結果を渡し、医師としての職務で知った秘密を、正当な理由なく漏らしたとされる。

 地検は、草薙氏も崎浜医師の了承のもとで調書を手に入れ、本を出版した「身分なき共犯」にあたる疑いがあると捜査。しかし、崎浜医師は取材内容が公表されることは認識したものの、「調書がそのままの形で引用されるとは思わなかった」と供述したことなどから、「身分なき共犯」の成立は困難と判断した。

 調書を見せるように働きかけたことが教唆犯にあたるかも検討したが、多額の金銭の授受や脅迫など、社会通念を逸脱した行為はなく、過去の最高裁の判例を踏まえ、違法性は問えないと結論づけた。「コピーは取らない」と持ちかけながら調書をデジタルカメラで撮影した行為などは「取材の駆け引きを超える範囲ではない」とした。

 地検は、草薙氏と親交のあった京大教授(49)の自宅なども関係先で捜索したが、崎浜医師のメールアドレスを草薙氏に伝えただけで事件に一切関与していないとして、立件対象にしなかった。

http://www.asahi.com/national/update/1102/OSK200711020071.html