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2007年11月01日(木) 12時01分

マドリッドは危険なのか?〜治安対策(1)ツカサネット新聞

一時期、「マドリッド=非常に危険な街」というイメージが強かった。実際に、首を絞められて身ぐるみはがれるという日本人観光客を狙ったいわゆる「首絞め強盗」が多発していた。

しかし、私がマドリッドへ初めて来た2006年の時点は、治安面の不安から激減した日本人観光客を取り戻すために、治安が悪いとういイメージを払拭しようとマドリッド市がやっきになった後。色々なところで言われていたような「危険な街」というイメージはほとんどなかった。夜もいつまでたっても比較的人通りが多いうえ、セントロの警官の巡回も非常に多く、女性一人の夜歩きでも、さほど危険を感じたことはなかった。そういう意味では、パリやローマなどの他のヨーロッパの大都市の方が、よっぽど治安が悪そうに感じたほどだった。実際数字の上から見ても、マドリッドの首絞め強盗の発生件数は2000年の353件に比べ、2006年では25件と10分の1以下に減っていることが分かる。

ということで、つい最近までは、せいぜい置き引きとスリに気をつけていれば、別に問題ないとタカをくくっていたのだ。そんな折、その意識を少し変える出来事があった。首絞め強盗ではないものの、実際に引ったくり被害にあってしまった日本人旅行者A氏に遭遇したのだ。

彼は通りで後ろから襲われて、全財産を入れたバッグを強奪されてしまったのだそうだ。幸いにして、怪我はなかったが、手持ちの金品、パスポート、航空券など全てを奪われたA氏は、旅の予定を短縮して日本へ帰国すると意気消沈していた。

置き引きやスリならば、まだ比較的、対処は簡単だ。
実際、スペインの日本大使館が毎月発表している日本人の犯罪被害レポートを見ても、スリや置き引きに関しては残念ながら被害者の不注意に起因するケースが非常に多い。レストランやバルのテラス席に現金やパスポートを入れた荷物を置いたまま席を離れるなど、信じられないほどに無防備な被害者もよくみかける。

レストランで食事中に荷物を床に置く、椅子の背もたれに掛ける等、私の周囲の人々が置き引き被害に遭っているのも、大抵こんな時だ。泥棒稼業の人々はこのような状況で、周囲の客に何の不信感も与えずに、ごくごく自然に荷物を持ち去ることができる。

例えば、以前にスペインのテレビニュースでバルセロナのレストランの防犯カメラの映像を見たことがあるが、その時は老人を含む家族連れを装って入店し、空席を探す振りをしながら、椅子の背もたれに上着を持った腕ごと手を付き、そのまま上着と一緒に荷物ごと持ち去っていった。被害者本人は勿論、同じテーブルに向かいあって座っていたはずの客も、支払いのときまでまったく気づかない妙技だったようだ。

ちなみに、私自身が一度スリ被害に遭いかけたのは、混雑したメトロの中だった。
母子らしき二人連れに時間を聞かれて、腕時計を見ている隙にバッグのチャックを開けられたが、幸いにして同行した友人に注意されて辛うじて被害は避けられた。こういった手法もごくありふれてはいるのだが、実際に通りなどで時間や道を聞かれることもよくあるので、友人との会話の最中で油断したのか、ついうっかり引っかかってしまったのだ。

ということで、スリや置き引きは非常に多く発生しているが、これらに関しては、
・混雑した通りやメトロではバッグの口をしっかり押さえて持つ。
・また、妙に近づいてくる人、話しかけてくる人には特に注意する。
・レストランやバルで、自分の荷物から目と手を離さない。
大抵の場合は、これで避けられるトラブルだ。

しかし、強盗となるとまた少し話は異なる。
しかも、件数は一時期より随分減ったとはいえ、首絞めなどの暴力的な強盗事件も皆無というわけではない。在スペイン日本大使館からの情報によれば、実際にスペインの日本大使館のこの2007年9月にも2件の首絞め強盗事件が発生している。この月に2件という数字が、A氏に遭遇したことで、急に身近に感じられた。


マドリッドは危険なのか?〜治安対策(2)

(記者:沢村奈津)

■写真
写真撮影:沢村奈津記者

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